
全米でいちばん有名な自然食品専門店は、
「ホールフーズ・マーケット」
と呼ばれるところです。
おそらく、世界でもっとも有名な自然食品専門店といっても過言ではないでしょう。
自然食品店というと、こじんまりした店舗を想像しがちですが、ホールフーズ・マーケットは1つ1つの店舗が広いです。
全米に200店舗、展開しています。
イギリスにも1店舗あるそうです。
ナスダックに上場しています。
1つ1つの店舗面積が大きいのと同時に、チェーンとしての規模という意味でもホールフーズ・マーケットは巨大です。
大きければ良いというものでもないとは思いますが、ホールフーズ・マーケットは僕
の好みでいうと、世界で一番たのしい自然食品店でもあります。
入店した瞬間の、あのワクワク感。
洗練された店舗デザイン。
商品の楽しさ。
いちど入ったら、2時間楽しめます。
ああいう店は、日本にはナカナカありません。
アメリカに旅行してお土産を買うならば、このホールフーズ・マーケットでお買い物をすることをお勧めします。
かつてアメリカにはローカルサイズの小規模な自然食品店チェーンがたくさんありました(今でもありますが)。
ホールフーズ・マーケットはテキサス州で誕生し、全米の自然食品店チェーンを次々買収して大きくなりました。
創業者は創業の時期、アパートを出て店に泊りこみ、食器洗浄器を風呂代わりにしていたとか、していなかったとか。
ホールフーズ・マーケットはその拡大する過程で、すべての店のデザインを、
紫と緑を基調にしたものに統一していきます。
この「紫」がミソで、
「アメリカ人が好む紫はどんな紫か」
というのを徹底的にリサーチし、その結果、得られた紫を、テーマカラーとして採用しました。
この紫が、ホールフーズ・マーケットの最大の魅力である「ワクワク感」の重要な要素となっています。
このへんの感覚的なところは、文章ではなかなかお伝えできません。
是非いちど訪ねて、ご自分の目で見てください。
ホールフーズ・マーケットは単に「規模が大きく楽しい自然食品専門店」というだけではありません。
大量生産でない、丁寧に作った農産物(オーガニックなど)は、通常より生産コストがかかります。
したがって売価も通常の慣行農業の農産物より高くしなければ、生産者が損をします。
しかし、売価を上げるとたちまち売れなくなるのが、「ホールフーズ・マーケット以前」の状況でした。
ホールフーズ・マーケットは、「大量生産でない、丁寧に作った農産物」を、適正価格で販売することに成功した、最初のビジネスだと言われています。
顧客に「ワクワク感」を持ってもらうことで、結果的に「大量生産でない、丁寧に作った農産物」の価値を伝えることができたわけです。
新しい価値観を創出したという意味で、ホールフーズ・マーケットは、社会に大きなインパクトを与えた企業の1つといえるでしょう。
さて、日本はローカルサイズの小規模な自然食品店チェーンがたくさんあるという点で、ホールフーズ・マーケットが生まれる前のアメリカに似ています。
そんな日本ですが、ホールフーズ・マーケットのようなハイレベルの自然食品の全国チェーンがこれから誕生するのでしょうか、しないのでしょうか?
誕生するといいですね...。

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