
「内食」「外食」「中食」
という言葉があるのをご存知でしょうか?
「内食」は、家庭で食事をすることです。
「外食」は、外(たいがい、飲食店)で食事をすることです。
かつて(半世紀ほど前まで)、ほとんどの日本人は家庭内で食事をしていました。
つまり「内食」です。
食育に関わっていると、
「現代の食は乱れている。家庭で食事をしなくなったのが原因だ。だから内食に回帰せよ」
という主張の強い人にときどき出会います。
高度成長を経て社会が物質的に豊かになると、人々はレストランで食事をすることが増えました。
つまり「外食」です。
日本の外食産業は、日本の経済が発展するのに歩調を合わせて発展しました。
働く女性が増え、「専業主婦」が減ってきたことにあわせ、外食産業が伸びたのです。
外食産業はバブルのころに30兆円産業にまで発展しました。
その後、バブル経済が崩壊し、人々の外食傾向はやや衰えます。
では昔のように内食に戻っていったのかというと、そうでもありませんでした。
たぶん人々はこう思ったんでしょうね。
「昔みたいに外食ばかりではお金がかかってしかたがない。でも今さら家で毎日食事を作るっていうのも、ちょっとねえ...」
以前と違い女性が働くようになった現代、家庭で食事をするといっても大変です。
代わりに男性が家族の食事を作ってくれるようになったわけではないですし。
バブルのころのように外食ばかりというわけにはいかなくなりましたが、だからといって内食にもそう簡単には戻れない。
そこで、「中食」が発展しました。
「中食」は、お惣菜を買い、家で食べることです。
「内食」と「外食」の中間です。
この流れは日本もアメリカも同じです。
アメリカでは「中食」のことを
home meal replacement (ホーム・ミール・リプレイスメント)
assembly cooking (アセンブリー・クッキング)
などと言ったりします。
仕事・家事・育児すべてを抱え、分刻みで奔走する現代アメリカ人が、お惣菜を手早く買い、帰宅後に家族の夕飯を整える。
そんな感じです。
さて、「中食」は「内食」と「外食」の中間なわけですが、アメリカでさらに「内食」と「中食」の中間みたいな業態が生まれているのでご紹介します。
meal preparation (ミール・プリパレーション)
meal assembly kitchen (ミール・アセンブリー・キッチン)
などと呼ばれています。
◆◆◆
「内食」と「中食」の中間とは、どのようなシステムかといいますと...。
まず、その会社のウェブサイトにアクセスします。
「店舗を選んでください」
と言われるので、自分に都合のよい場所にある店を選び、クリックします。
「メニューを選んでください」
と言われるので、お好みのメニューを選びます。
「日時を選んでください」
と言われるので、都合のよい日時を選んでクリックします。
申込完了。
インターネットでの操作はここまで。
選んだ日時に合わせて選んだ店舗に出かけます。
そこはキッチンになっており、食材がきちんと並べられています。
インストラクターがあなたを待っています。
あなたはインストラクターの指導に従ってそこで料理を作ります。
ウェブサイトで選択したメニューを作るわけです。
「あとは家でちょっと焼くだけ」「さっと温めるだけ」の状態まで作り、自宅に持ち帰ります。
「来店客」はあなただけではなく複数いますので、みんなでワイワイ作ります。

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