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アメリカ食通信

TITLE:アメリカ食通信 Vol.4 パワーフードを生み出す国アメリカ

7月4日がアメリカ合衆国の独立記念日にあたることは、これを読まれている皆さんならよくご存じのことと思います。
たいていのアメリカ人にとり、独立記念日は11月の感謝祭(サンクスギビング)に匹敵する重要な祭日です。この日、アメリカ全土で盛大なパレードや花火、イベントが行われます。たとえばニューヨークで7月4日に開かれる「ネイサンズ国際ホットドッグ早食い大会」はつとに有名です。ホットドッグの早食い大会は他にも多数ありますが、1916年に始まったという歴史の 長さと知名度では他の追随を許しません。なんと日本人が何度も優勝しており、「なぜ体の細い日本人が優勝できるのか」というテーマで、科学者が論文を書いたほどです。(これを書いている時点では、まだ今年の優勝者は決まっておりません)国民が独立記念日をこのように盛大に祝うのは、国家のお仕着せではなく、個人個人のなかに「自分は自由の国アメリカ合衆国の一員である」というプライドと喜びが深く浸透しているからだと思われます。これは実際に、7月4日の到来を楽しみにしているアメリカ人に接するとよく分かります。経済大国、軍事大国と言われるアメリカですが、その根底にあるのは「自由を支えているというプライド」なのではないでしょうか。このプライドがあるかぎり、アメリカのエネルギーは失われず、世界に冠たる存在であり続けるでしょう。

そうしたエネルギーを感じる国アメリカですが、一方で、この国は肥満人口の増加に悩む国だと言われ、そのような報道がなされたりもします。世界でもっとも影響力のある国が、自国の国民の食生活管理には苦労している、といった印象があり、まるで反面教師のような見られ方をしているようです。しかしそれは、ほんの一面を捉えているに過ぎません。
世界でもっとも早く高齢化が進んでいる日本であるからこそ、高齢化社会に対応したさまざまな行政サービスや民間のビジネスが生まれています。同様に、肥満人口の増加という問題に世界でもっとも早く直面したアメリカだからこそ、人々の食生活を変えるための方策が世界に先駆けてさまざまに生みだされています。
生みだされた方策は、アメリカの後を追う他の先進国の手本となっています。

どのような方策が生みだされているのか、いくつか紹介します。

<フードガイド・ピラミッド>
健康のために、なにを、どれだけ食べたらよいのか?
この問いに答えるために開発された、ビジュアルツールです。
ピラミッド(三角形)の下のほう(面積が広い)には「しっかり食べるべき食品」を、ピラミッドの上のほう(面積が狭い)には「少しだけ食べる食品」を表示しています。 これにより、しっかり食べるべきもの、そうでないものが見てすぐ分かるように工夫されています。アメリカ政府はこのビジュアルツールを国民の目につきやすいさまざまな場所に配置しました。(なお、2005年にこの図案は改訂され、名称も「マイ・ピラミッド」に変わりました)「(ピラミッドのような)分かりやすいビジュアルツールを作り、それが国民に認知されることで、食生活の改善が進むことをねらう」というやりかたは、ソーシャル・マーケティングと呼ばれ、世界各国に採用されています。
ちなみに日本は「食事バランスガイド」というビジュアルツールを作りました。日本の「食事バランスガイド」はピラミッドを逆さにした逆三角形のコマの形をしており、「なにをどれだけ食べたらコマがバランスよく回るのか」が分かるようにデザインされています。

<デザイナーフーズ>
1990年に、アメリカ国立がん研究所が「デザイナーフーズ・プログラム」を発表しました。
がん予防に効果の高い食品を、ピラミッド状に並べたものです。
上記の「フードガイド・ピラミッド」とは反対に、がん予防効果の高いものを上から順に配置しています。これも、「なにを食べたらよいか?」に答えるために開発された、ビジュアルツールの一種です。

このデザイナーフーズですが、がん予防に効果が高いのかそうでないかの判断を、「メタ・アナリシス」という統計学の手法を使って行っています。
「昔からがんに効くと言われている」
「有名人の○○さんがこれを食べてがんを克服した」
といった曖昧なものは判断材料から排除し、科学的に厳密なやり方で効果の判断を行いました。
このような、統計学を用いて厳密に食物の健康効果の判断を行うやりかたを、EBN(Evidence-Based Nutrition)といい、この考え方もアメリカで生みだされ、世界各国に採用されています。

<ORAC>
体内に「フリーラジカル(活性酸素)」と呼ばれるものが増えると、さまざまな健康障害が起きると言われています。
「フリーラジカル」を減らす物質のことを「抗酸化物質」といい、たとえば

■ビタミンC
■ビタミンE
■コエンザイムQ10
などが「抗酸化物質」に該当します。
食品によってはこの「抗酸化力」が強かったり、弱かったりします。
ORAC とは、食品の「抗酸化力」を測る指標で、これもアメリカで開発されました。
日本ではまだあまり知られていませんが、アメリカでは食品の ORAC 測定が進められています。
ちなみに、ORAC の値の高い菓子はチョコレート。
野菜であればアーティチョーク、豆類。
果物ではベリー類。
となっています。

<ONQI>
ONQI は、食品に100点満点で点数をつけようという、アメリカで進められているプロジェクトです。
■タンパク質・炭水化物・脂肪
■ビタミン・ミネラル
■食物繊維・ファイトケミカル(各種機能性成分)
など30種類の要素を勘案し、100点満点で評価されます。
現在、科学者や医師・栄養士などが集まって「点数化」が進められています。
忙しい買物客のために、食品の健康貢献度がひと目で分かるようにしよう、というのが、このプロジェクトの目的です。
この評価法によると、こんな点数がつけられています。
■イチゴ:100点
■ホウレンソウ:100点
■オレンジ:100点
■リンゴ:96点
■バナナ:91点
■アーモンド:82点
このように、アメリカでは食品に順位をつけたり点数をつけたりする研究が盛んに進められています。
ここで紹介した以外にも、さまざまな順位づけ・点数化のアイデアがあります。
こうした研究や方策は、もともとは増加する肥満人口の問題に対処する目的でスタートしています。
しかし、食品に順位や点数がつくようになると、上位に位置する食品は「優れた食品」とみなされるようになり、「健康な人が、より健康になるために食べるための指標」として、積極的に食生活に取り入れられるようにもなります。こうした食品は「スーパーフード」「パワーフード」などと呼ばれ、ヘルス・コンシャスな人々の日常の食卓に並んでいます。

まさに、エネルギーあふれるアメリカならではの展開だと言えるでしょう。


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