Home>週刊myfood>アメリカ食通信>アメリカ食通信Vol.2 農業を「経営すること」をアメリカに学ぶ

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アメリカ食通信

TITLE:農業を「経営すること」をアメリカに学ぶ

アメリカといえば金融大国であり、IT大国であり、宇宙産業大国です。
時代の先端をいく企業がひしめいているイメージがありますね。
間違いなくそのとおりなのですが、そんなアメリカが、じつは世界に冠たる農業大国でもあります。
その証拠をお見せしましょう。

* とうもろこし生産量は世界の42パーセント
* 大豆の生産量も世界の33パーセント
* 小麦の生産量は世界の9パーセント
* オレンジの生産量は世界の8パーセント
(国際連合食料農業機関(FAO)の2007年統計より)

ウォールストリート(金融の中心)やシリコンバレー(IT産業のメッカ)やNASA(アメリカ航空宇宙局)がある一方で、広々とした田園風景もまた、アメリカの特徴だというわけです。

さて、アメリカといっても国土は広い。
農業も地域によって特徴があります。
日本人メジャーリーガーのいるところを例に出しますと、
*(東海岸)松井選手がいるニューヨーク、松坂投手がいるボストンは、アメリカ北東部に位置していますが、このあたりではハーブの生産などが盛んです。
*(西海岸)イチロー選手や城島選手がいるシアトルは、アメリカ北西部に位置しており、このあたりでは野菜のほかに、小麦やジャガイモが生産されています。
*(西海岸)かつて野茂投手が活躍したロサンゼルス・ドジャーズのあるカリフォルニア州は、全米最大の農業州です。いろいろ栽培されていますが、柑橘類やイチゴをはじめとした果物が有名です。

日本人メジャーリーガーがいないところではどうなっているかというと...。
*アイオワ州・イリノイ州・インディアナ州・オハイオ州といったあたりは「コーン・ベルト」と呼ばれ、その名のとおりトウモロコシが大規模に生産されています。
*アメリカ北西部からちょっと内陸に入ったアイダホ州あたりでは、ジャガイモの生産が盛んです。「アイダホ・ポテト」という言葉があるくらいです。

◆◆◆

そのアイダホ州にはジョンという友人がいまして、大学で経営学を専攻したあと、農業をしています。
前述したようにアイダホ州はジャガイモで有名な州ではありますが、ほかにも様々な作物が作られており、ジョンは豆類やトウモロコシを作っています。

「農業をしている」というと、日本では「実際に農作業をする=四六時中、土に触れる」というイメージがあります。
事業というよりも、生業(なりわい)に近いイメージ。

アメリカでは、「農業をしている」というのは、かならずしも自分が農作業をするという意味だけではなく、「農業を経営する」という意味も含みます。
自らが土に触れ、土壌の管理をするのはもちろんですが、「農業会社を作り、社員を雇用し、農業機械を導入し、事業として健全に経営する」ということを指します。
なので、MBA(経営学修士)の称号を持つ人が農業をする、ということが普通に起きます。
(日本では、MBAの称号を持つ人が農業をすると、ニュースになることがあります)

ジョンは「農業を経営」しているわけですが、経営するとなると、さまざまな事柄を「管理」するようになります。
社員の管理もすることになりますし、お金の管理をすることにもなります。
できた農産物の品質も、きちんと管理するようになります。
むろん、個人プレイで農業をする場合も、いろいろな管理が行われるわけですが、農協など他人任せにするのとは違い、自らが「経営」するとなると管理のレベルが上がります。

生産に関しては農家個人としての愛情を注ぎつつも、顧客のニーズに応えるため企業としてきちんと管理されたレベルの農産物が出荷されることは、食べる側にとっても非常に重要なことですね。
品質のばらつきが少なく、安全性もじゅうぶんに管理されている。
そういう農産物を生み出すためには、「農業を経営する」という感覚がおおいに役にたつのではないでしょうか。

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