Home>週刊myfood>クローズアップインタビュー>第四十五回:ルールから自由に。食べたいときに、食べたいものを ジョディ・ウィリアムズさん

週刊myfood...様々な視点からアメリカの食文化、食情報を4つのコラムで紹介します。

クローズアップインタビュー

クローズアップインタビューVol.45 :ルールから自由に。食べたいときに、食べたいものを ジョディ・ウィリアムズさん

クローズアップインタビューVol.45 :ルールから自由に。食べたいときに、食べたいものを ジョディ・ウィリアムズさん

アメリカの食を楽しむ2週間、Taste of Americaの季節にあわせて、今年もアメリカから素敵なシェフがぞくぞくと来日されました。今回インタビューに応えてくださったジョディ・ウィリアムズさんもそのひとり。ニューヨーク・イーストヴィレッジにある超人気店Buvette(ブヴェット)のオーナーシェフとして、とびきり明るく誠実な「食べるお話」を聞かせてくださいました。



myfood:ジョディさん、ようこそ日本へ! さっそくですが、日本料理は試されましたか?

ジョディ:日本料理のことならお話ししたいことだらけ。夜の9時にホテルに着いて、翌日3時には築地で寿司を食べたんだから。そう、魚市場のレジェンド、築地よ。本当に素晴らしかった! 今までの人生で最高の寿司だったわね。

myfood:寿司以外にもなにか楽しまれましたか?

ジョディ:ホテルから近かったので、夜中の銀座界隈をぶらぶらして、立ち食いラーメンも試したの。それから、「食堂」っていうの? お母さんやお婆さんが作る、野菜料理なんかを出してくれるレストランにも行ったんだけど......素晴らしかった! いろいろと学ぶところがあったわね。

myfood:さまざまな海外を経験されていると聞いています。アジアに来られたことはこれまでにもあったのですか?

ジョディ:中国、タイ、日本もね。日本では名古屋、京都、大阪、倉敷に、少しですが滞在したことがあります。いっぱい学びましたね。やはり、本場で体験することが大切だな、って。

myfood:これまでで一番のお気に入りの日本食はなんでしょう。

ジョディ:今はまだ発見の途中だからこれとは言いたくないし、それぞれに良いところがあるからひとつになんて絞れないわ。お寿司、刺身、焼き鳥、てんぷら、それぞれ全部が美味しくてビューティフルなんですもの。とんかつ屋さんもね、すごく美味しくて楽しいお店をみつけたの!

myfood:食を楽しまれているご様子が嬉しいですし、ぜひ日本の滞在をお楽しみください。さて、シェフのレストランについて教えてもらえますか。

ジョディ・ウィリアムズさん ジョディ:まずわたしと仲間でやっているブヴェットについてお話しますね。ブヴェットは「ガストロティーク」と呼ばれる種類のレストランです。ガストロティークとはつまり、単純に美味しい料理を出すバーのこと。だから、わたしたちの店は食べたり飲んだりを一日中楽しめる場所であるように心がけているの。コーヒーにラテ、ワッフルやクレープやゆで卵から、夜中にはクロックムッシュー、ワイン、ビールにチーズまで。この業態ではニューヨークのグリニッジヴィレッジとパリにお店があるのよ。まずニューヨークで始めて、次いでパリに出店してから3年が経ったの。素晴らしいお友だちの輪のおかげで成り立っている、と言っても過言ではないわね。

myfood:ブヴェットは、そのうち東京にも?

ジョディ:ええ、もちろん喜んで! ずいぶん多くの人たちに「ブヴェット東京はいつできるの?」と聞かれていますからね。

myfood:未来が待ち遠しくなるお話ですね。ジョディさんから見て、最近の食のトレンドはどこにあると思われますか。

ジョディ:わたしたちのゲストの皆さんもそしておそらくmyfoodの読者さんたちも、これまでになく「食」についての知識が豊富です。TVなどのメディアからの情報もいっぱいありますから、本当に皆さんよくご存じなんですよね。冒険好きだし、食が目的の旅行もする。美味しい、と知ったらクロックマダムのために午前中ずっと列に並んだりもする。「ベスト」のものがあると聞いたなら、わざわざ行くことにも価値があるんだ、と知っていらっしゃる。だからこそわたしたちは、この人気を続けていくこと、そしていつも満足していただくように準備することに挑戦しつづけているんですよ。と同時に、お客様に楽しんでいただくことは、わたしたちの喜びでもあります。ちょっとした夕食や朝食なんですけどね、喜んでもらえるって本当に嬉しいものなのよ。わかるかしら?

myfood:ニューヨーカーのトレンドに対する敏感さは、わたしたちの読者の方とも重なるような気がしますね。

ジョディ:そうね。国際都市だしたくさんトレンディなものがある、という意味で、東京の人たちとニューヨーカーは似ている点が多いと思うの。両者ともつねに何かしら「うまく出来たもの」......つまり美味しいもの、おもしろいもの、価値のあるものを探しているし、「クオリティー・オブ・ライフ」を追求していると思うの。健康でいて友人や家族と楽しめる生活、いっぱい働きながらも遊ぶ時間をみつけて楽しむ生活、なんて具合に。

myfood:ブヴェットはどんなお客さまが多いんでしょうか。やはり働いている方たちのランチであるとか。

ジョディ・ウィリアムズさんジョディ:おもしろいことに最近では、レストランでのランチや朝食に時間をかける人が多いんですよ。というのも、ミーティングをしておられるんですね。少し前だとランチミーティングが多かったんですが、最近は朝食ミーティングへと変化しているようです。エディターやアーティストのミーティングにも使われます。もちろん仕事の人たちだけでなく、日本やフランスからの旅行客も多いんですが、近所に住んでいる皆さんもいっぱいですね。


myfood:そんなお客さまに向けた、シェフのメニューや食についてのこだわりについてお伺いしましょう。

ジョディ:わたしたちはトラディション(伝統)を大切にします。クラシックなもの、トラディショナルなものが大好きなんですが、それを「アントラディショナリー」、つまりトラディショナルでないやり方で楽しむことこそが、わたしたちの哲学でありこだわりです。どういう意味かというと、クロックムッシューやマドレーヌ、キャセロールやコックオーヴァン(鶏のワイン煮)などトラディショナルなものを出すときでも、これまでのレストランと同じ提供の仕方......つまりまずは前菜から順番に、といった複雑なルールに従う必要はありません。うちのお客さまは、食べたいものを食べたいときに楽しむことができるんです。

myfood:トラディショナルでクラシックなメニューもたくさん用意されているなかで。

ジョディ:夜中までワインと一緒にちょっとだけキャロットラペにチーズを、という軽さだって楽しんでいただけます。活気があって自由があって、いろいろできるんです。音楽のボリュームもちょっと大きくして、シャンパンと一緒にチョコレートムースを一口、なんてね。ちょっぴりロマンチックでしょう? ここまでの自由さってほかのレストランにはないと思うわ。そう、ルールに縛られることはないんです。

myfood:秋の食イベントTaste of Americaでは、銀座の「ラシーヌ」でメニューを出されますよね(編集部注 2015年10月14日まで開催されていました)。

ジョディ・ウィリアムズさんジョディ:ラシーヌはスペースがあって木を多く使った、居心地のよい雰囲気の素敵なレストラン。ですから家族向けのメニューにぴったりだと思うんです。食事の目的のひとつとは、人と会って楽しむことでしょう? ですから、最初はトラディショナル・フレンチの野菜のマリネ。たとえば千切りしたニンジンをピスタチオ、コリアンダー、レモンと一緒にマリネした「キャロットラペ」ですとか、長ネギをさっとブイヨンで湯がいたものをマスタードと粒マスタードでマリネした「ポロ葱」トースト添え、そして塩ダラを水で塩抜きしたものをポテトと一緒にした「ブランダード」、という流れでゆっくり楽しんでいただきます。そのあとに赤ワインとガーリックに3日間漬けたチキンをじっくり煮た「コックオーヴァン」の登場です。それからスライスしたポテトにブリーチーズとハムと玉ねぎで作ったグラタン「タルティフレット」。ほかにもラタトゥーユなど何点かを用意します。そして最後にお出しするのが「チョコレートムース」。わたしにはニューヨークでもパリでもここ東京でも、一緒に働く仲間がいるの。もちろん今回は銀座のラシーヌの皆さんも一緒です。

myfood:どんな都市にもお仲間がいて。ジョディさんはここ東京でも、さまざまな食材に触れられているとか。

ジョディ:今は季節が秋だから、かぼちゃやキノコなどが売られているし、こちらのシェフに築地にも連れていってもらって、素晴らしい素材をいっぱい見たのよ。もちろんアメリカの素材もいっぱい日本に入っているんだと分かったわ。たとえばカリフォルニア・オリーブオイルやナッツ、キャベツの千切りサラダにも使えるクルミとか。チーズも輸入されているし、こうしたものを日本の豊富な食材と一緒に調理すれば、本当に優れたディナーの出来上がりよ!

myfood:シェフのお料理はお母さまやおばあさまからの影響を受けたものですか? ご自身のソウルフードについてお聞きしてもいいですか。

ジョディ・ウィリアムズさんジョディ:わたしのソウルフードね! それなら父の話もしなくては。わたしが大学に行く前は、父が肉屋だったのよ。彼の料理って、家族の中では最高だったの。よくレストランにも連れて行ってくれたし、そこでもいろいろ学んできたわ。たとえば、わたしが初めて食べた寿司は父が作ったものだった。そのころわたしの家族はサンフランシスコに住んでいたので、料理を学ぶには絶好の環境だったのよ。そんな思い出もあって、父の料理や、スーパーで売られているようなシンプルな料理がわたしにとってのソウルフードかもしれないわ。そして、海外での生活も長かったから、そこにもわたしの源流があると思う。わたしは、自らいろいろな人たちを訪ねて料理を学び、シェフになった人間です。シェフになるための専門学校に通ったわけではないんです。イタリアやフランスでは約6年間修行しました。ですから、今あるわたしのレストランはどれもローカルな食材を使っているものの、料理そのものにはフランス料理やイタリア料理の伝統の影響が見えるはずです。ちなみにね、シェフというのはハードだけど楽しい仕事ですよ。



【myfood読者のためのジョディ・ウィリアムズ流かんたんレシピ】
「ウォールナッツペースト」
フードプロセッサーに、くるみ(トーストしたもの、一握り)とパルメザンチーズ(一握りより少し少なめ)を同じくらいのサイズに細かくして混ぜる。フレッシュなタイム(1枝)をちぎって混ぜ、ドライトマト(2?3個、みじん切りにしたもの)、塩一つまみを入れて攪拌する。オリーブオイルを大さじ3入れてさらにペースト状になるまで攪拌してできあがり。

「わたしのレシピを聞いてくれるなんて嬉しい! オリーブオイルを多めにすればパスタソースにもなるし、ステーキやトーストしたパンに塗っても美味しいから、ぜひ作ってみてくださいね!」



【プロフィール】
Jody Williams(ジョディ・ウィリアムズ)
ニューヨークの名だたるイタリアンレストランGust, Morandi, Gattinoでシェフとして務め、2011年にBuvetteをオープン。朝食からはじまり、コーヒー、食事、ワインと一日を通して楽しめる、家族が集うような居心地感とフランス家庭料理を提供する小さな店として「ガストロティーク」というスタイルを確立。ニューヨークのみならず世界中にファンを持ち、今、もっとも注目されている女性オーナーシェフのひとり。

>>「I Love Buvette」はこちらから






【関連サイト】
>>「I Love Buvette」はこちらから
>>「RACINES Boulangerie&bistro」はこちらから


【関連ページ】
>>「特集記事:イベントレポート/アメリカをまるっと食べちゃう2週間 Taste of America」はこちらから