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クローズアップインタビュー

クローズアップインタビューVol.42 :ファインダイニングならではの繊細な味 ショーン・ハガットさん

クローズアップインタビューVol.42 : ファインダイニングならではの繊細な味 ショーン・ハガットさん

クローズアップインタビュー第42回目は、ミシュランの星やエスクワイヤマガジンの賞を次々と獲得しつづける、NYでもっともホットなシェフ、ショーン・ハガットさんにご登場いただきましょう。ショーンさんは、懐石料理にヒントを得た「ヘルシーでハングリー」な味を提供しつづけています。なぜ今アメリカで「懐石」なのか? なぜ懐石が「ハングリー」なのか? ......その謎は、記事の中で明かされます。

myfood:NYにショーンさんがオープンしたJuniミシュランガイドの一つ星をオープン1年以内に獲得するなど話題となっていますが、どのような特徴があるレストランなのでしょうか?

ショーン:Juniは43~50席の小さな、いわゆるブティックスタイルのファインダイニングですから、シェフとお客様が身近ですし、親近感を楽しんでもらえることでしょう。そして四季折々の旬、「マイクロシーズン」を、一年を通して味わっていただけることが特徴と言えます。折々の季節に合わせたもっとも旬な食材を最適化させ、 Butter sqush, crystal lettuce, egg yolk puree, maple reduction - cShaun Hergattベストな状態で提供するのです。たとえば夏はベリー類が旬なので豊富に取り扱いますが、秋になるとまったく別の素材を選ぶ、というように。アメリカでの15年間において私は、特定の時期、場所、食材を慎重に選ぶことでベストな料理を提供できるんだ、と学びましたね。

myfood:ショーンさんには、その一皿ずつの提供方法にもこだわりがあるそうですね。

ショーン:ほとんどの場合は、15~22種類のいろいろな料理が少量ずつ一皿に載る、テイスティングメニューから始めていただきます。メニューの羅列から何も知らずに選んでいただくのではなく、少しずつ試して、経験していただくことができるのです。そして、私のレストランに座って食事をしていただくことによって、私の子供時代、私の人生、そして私の料理のインスピレーションから、お客様の一生の思い出を作りあげたいと思います。それがJuniです。

myfood:ご本人はオーストラリアご出身ということですが、アメリカで数々の賞を受賞されていますね。ショーンさんがアメリカを舞台をしていらっしゃるのは何故なのでしょう?

Organic chicken oyster -Yarrow- Sedum - Ash Goats Cheese Espuma- Amethyst berries - cShaun Hergattショーン:おっしゃる通り、前のレストランではミシュラン星二つと「エスクワイヤマガジン」でベストNYレストラン賞をいただきました。Juniではミシュラン星1つをオープン最初の年でいただき、「エスクワイヤマガジン」でベストNYレストラン賞やエクスペクターアワード......などなど、たくさんの賞をこの12年間でいただいています。

23歳の時にワシントンDCやボストンのレストランで働いていましたが、その後NYで3年間、フロリダ州マイアミでエグゼクティブシェフとして1年半働き、NYに戻って初めて自分のレストランをオープン。それからJuniをオープンしました。海外で働くことが私の夢だったんですね。そこで分かったことがひとつあります。職業というものは、その時には次にどんなステップがあるのか分からなくても、自分の価値を突き詰めてベストの仕事をすることで、よい結果を導くのだ、ということです。今の私がいるのも、こうした考え方を実践したからなんです。

myfood:アメリカ各地のレストランでの経験がおありですが、現在のショーンさんを形成する、最も魅力的な場所とはどちらでしたか?

ショーン:私はフロリダやボストンでもシェフをやってきましたが、結局はNYに戻ってきました。自分のシェフとしてのルーツはNYだと思っています。なぜなら教育の上でも、「食」を中心にしている点においても、そして世界中の食に関心の高い人たちの集まる場所だからです。それはNYと同様に、東京についても言えることですね。私にとって大切なコンセプトは「お客様の、一生の思い出に残るようなレストラン」ですから、大勢の人たちに知ってもらうことよりも、どれだけ私の料理を理解してくださるクオリティーを持ったお客様がいる土地か、ということが重要なんです。

myfood:ショーンさんならではの食材選びのコツ、とはどういったところにあるのでしょう?

Live montauk scallop, almond, garden radish - cGina Marie Santucciショーン:もちろんレストランでは高品質の食材を使っているのですが、今はユニオンスクエアのマーケットのような市場もよく利用しますよ。だいたい50くらいのファーマーから、エディブルフラワー(食用花)やフルーツ、野菜などさまざまな食材を仕入れています。私のレストランは特に野菜によって成り立っているわけですが、ご存知の通りそれらは旬やマイクロシーズンのある食材ですよね。ですから目利きのファーマーには頼っていますし、良い関係を保てていると思います。ユニオンスクエアにマーケットが立つようになって、もう10年以上になりますから、彼らはどんなシェフが買いにきていてどんな食材が必要なのかを分かってくれています。私は、そうした心強いファーマーたちとの関係を、とても大切にしていますね。

myfood:ショーンさんの目から見て、現在的なアメリカの「食」の潮流とはどういったものでしょうか?

築地市場を視察するショーン・ハガット氏ショーン:今のアメリカに見てとれるのは「食のグローバル化」ですね。NYでは本当にたくさんのレストランがオープンしたりクローズしたりしているんですが、わりと手ごろな値段のカジュアルレストランも多くオープンしています。また、10年くらい前からのトレンドですが、野菜をフォーカスしたレストランが多く見られますね。肉などのプロテインがフォーカスされた時代は去り、現在のNYではさまざまな地域からやってきた、ローカルで美しい野菜がフォーカスされるようになっていますし、それが現在的なNYシティのトレンドだと言えるでしょう。アメリカといえば、以前はステーキとジャガイモが主流の国でしたけれど、今はさまざまな野菜などの食材を、産地について学びながら楽しむように移り変わってきていますね。

myfood:多くのアメリカ人は、よりヘルシーな食生活へと嗜好が変わりつつあるのかもしれませんね。それでは流行っている料理やデザート、ドリンクがあれば教えていただけますか?

ショーン:カクテルはドリンク類のトレンドといえるでしょうね。Juniのカクテルメニューを見ていただくと、そこにいかに季節感を盛り込んでいるか、が伝わると思います。私のレストランでは、食事のメニューを替えるのと同時にカクテルのメニューも新しくしているんですよ。たとえば秋にはスパイスやアロマを使ったカクテル、春にはハーブやフルーツのようにフレッシュな香りのする材料を使ったカクテル、そして夏にはきゅうりや野菜を使ったカクテル、というように。とてもデリケートですが、これは厨房で料理に込めるフィロソフィーや創作プロセスなどと同じなんです。シンプルな中に、季節感とフレーバーを届けることを大切にしています。カクテルと料理の違いをあえて挙げるのならば、カクテルはお客様がまず最初に口にするもの、つまりそのレストランで最初の経験になりますから、そういった意味でとても気を使っています。大変重要なものなんです。最初の1品ですから、ベストのクオリティーが求められるんですね。

myfood:日本の懐石料理にも影響を受けていらっしゃると伺いましたが、どのような点を取り入れられているのでしょうか?

Juni - Kumamoto Oystersショーン:懐石料理は、まさに私がやっている「テイスティングメニュー」なんです。何種類ものコースの中で、それぞれに何種類ものフレーバー、食感の組み合わせ、いくつもの料理を楽しめます。私は、食事をするならちょっとずつ味わいたいと思うんですよ。それぞれの料理でインスピレーションが湧きますし、ワクワクするし、食感やフレーバーや色で楽しむことができますからね。もちろん懐石は毎日の食卓で食べられるような料理ではありませんけれども、そもそも私自身、家で食べられるようなものをレストランで食べたいとは思いませんから。

myfood:懐石料理にインスパイアされたテイスティングメニューを、どのような"作戦"で組み立てていらっしゃるのでしょうか?

ショーン:料理はやはり「味」がすべてです。料理とは、まず味わってからフレーバーとの同調、口ざわり、最後に見た目、の順番で認識するものですが、私が思うに、とりわけ重要なのが「味」です。そして次に「最高に味の良いものをどのような順番で出すか」です。そこで私は"作戦"を立てました。人は美味しいと思ったら「もっと欲しい」と思います。しかし提供されるのは少量だけです。次の料理に行きます。また少量です。これも非常に美味しいと、お客様はまた「もっと欲しい!」と思います。この連鎖が、テイスティングメニューの真骨頂です。つまり、私の料理を楽しんでいただくためには、なるべく長い間ハングリーになっていていただかなくてはならないんですね(笑)。

myfood:懐石料理の持つ「戦略性」を、ショーンさんは看破していらっしゃる、というわけですね。それでは最後に、アメリカ料理の良さ、日本料理の良さを一言で教えていただけますか?

築地市場を視察するショーン・ハガット氏ショーン:実は、日本とアメリカの料理には似たところがあります。そのどちらも進化し続けていると思います。トラディショナルな部分を保ちつつ、新しくエキサイティングなものへといつも変化しつづけているんですね。日本とNYの似ているところとは、人々がいつも新しい、フレッシュさを求めているところだと思います。そしていつも鼓舞されるようなおもしろさを求めているところです。そしてもちろん、素晴らしい能力をもったシェフが大勢いるところも挙げられますね。新しいものにトライする心、伝統を大切にしながらも新しい味にむかってチャレンジする気持ちが、アメリカ、特にNY、そして日本にはあると思っています。






【myfood読者のためのショーン・ハガット流かんたんレシピ】

「ベビートマトとゴートチーズのサラダ」

(1) ベビートマトを半分にカットする。
(2) 塩、こしょう、砂糖を少々ふる。
(3) ヒソップ(ヤナギハッカ)の葉をみじん切りにしてふりかけ、ホワイトバルサミコ酢とオリーブオイル、ブラックペッパーのドレッシングをかける。
(4) 最後にポロポロにしたゴートチーズをふりかける。



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