クローズアップ・インタビュー第38回目は、ニューヨークにあるレストラン「グラマーシー・タバーン」のシェフ、マイケル・アンソニーが最近来日して東京・新宿のパークハイアットのニューヨークグリルで特別なメニュープロモーションを開催しました。さらに、ヒラリー・クリントン米国国務長官の「アメリカンシェフ部隊」*のメンバーでもあるシェフ・アンソニーは、芝公園にある全日本司厨士協会でアラスカ天然サーモンを使ったクッキングデモンストレーションもこころよく引き受けてくださいました。
myfood:アメリカ料理はハンバーガーからカリフォルニアキュイジーンまで幅広いイメージがありますが、アンソニーさんにとってアメリカ料理のイメージは?
シェフ・アンソニー:アメリカ料理とは大きい概念を指していると思います。あえて言葉にするなら、そうですね、「オープンさ」、「ボーダーがない」、「果てしない」、といったところでしょうか。アメリカ料理の素晴らしいところは、アメリカに移民としてやってきた人々によって作られ、アメリカ全土または一部地域のアメリカ料理に影響を与えて出来上がった料理であるところです。時に文化とは個々の伝統にとどまってしまいがちです。伝統も重要ですが、一方で沈滞や革新不足といったことに陥ってしまうことがあります。アメリカ料理とは革新そのものなんです。
myfood:何年か前に日本で料理を勉強なさったことがあるとお聞きしましたが?アンソニーさんのスタイルにどのような影響がありましたか?
シェフ・アンソニー:グラマーシー・タバーンでは日本料理は作りませんが、あきらかに日本で学んだ調理のいくつかの要素がニューヨークのメニューに生かされています。たとえば、日本料理は季節や地元食材にとてもフォーカスしてますよね。そういったところを取り入れています。
myfood:グラマーシー・タバーンではメニューをどのように開発していらっしゃいますか?
シェフ・アンソニー:私がグラマーシー・タバーンで働き始めた時には、すでにアメリカン・ホスピタリティーを担うレストランとして有名なレストランでした。でも、どんなレストランでも実績に満足して胡座をかいていられるものではありません。ですからグラマーシー・タバーンがさらに進歩するためにはチャレンジすることにしました。グラマーシー・タバーンがアメリカ料理とホスピタリティーの進化を代表するんだ、と決めたのです。レストランはテクニカル面と心理面との2つの大きな要素から評価されます。多くのレストランはテクニカル面を重要視する傾向があります。けれども、グラマーシー・タバーンでは、雰囲気やレストランの心理面といったものが51%の要素だと信じています。食事をした時にどう感じますか?どんな感情が生まれますか?といったものです。
これも私が日本からアメリカに持ち帰った日本料理の重要な一面です。日本料理はとても心理的で、この国の文化の重要な一部分なのです。
myfood:アメリカ料理はどのような料理でしょうか?
シェフ・アンソニー:アメリカのシェフ達はアメリカ料理というものを再定義しているところです。アメリカの料理の大部分はアメリカの地域料理から影響をうけた、ということは周知ですが、さらに今アメリカ料理はヘルシーで創意に富んだ料理といった方向に向かっています。グラマシーでは新しい料理を開発する際、3つの原則に従っています。まず最初に「シンプルであること」。食べものは食事をする人にとってわかりやすくあるべきです。多くのシェフは複雑で込み入った料理を作ります。確かに素晴らしいのですが、食事をする人にはわかりにくいものです。一皿の料理によって、食事をする人に食事とレストランを一連の記憶として覚えてもらわないとなりません。2番目には「結びつき」。これは私の日本での修行から学んだものです。料理は地域、季節、文化、自然に結びついていなくてはなりません。これは私が使う全ての食材がニューヨーク産でなければならい、という意味ではありません。料理は食事をする人が関連付けられる何かに結びついているべきである、という意味です。たとえば、最近私はニューヨーク北部のにんにくを料理に使いましたが、実際にはニューヨークシティーからは何マイルも離れたところからのものですが、食事をする人は同じ州からの食材であることに特別な思いをもってくれます。3番目には「創意に富んでいること」。好奇心をそそる特性や目新しさがあることです。これによって料理はエキサイティングなものになり、人々はさらに惹きつけられるのです。たとえば、今日私はアラスカの銀ダラをアップルウッドチップで料理しましたが、これは両方ともとてもシンプルな材料ですが一緒に料理することで新しい料理となったわけです。
この3点が達成できていればお客様は継続して来てくださいます。
シェフ・アンソニー:今回はアラスカの天然の銀ダラをストーブトップスモーカーでアップルウッドチップを使ってスモークしました。スモーキング(燻製)はゆっくり時間をかける調理法ですが、素材の柔らかさを保たせることができるし、アップルウッドチップは魚に風味をつけることができます。先ほど申し上げましたとおり、シンプルなのに新しい。また、ビーツとにんにくは地元のものを使うことによってその地方の文化や地域というものに結びつきが生まれます。ビーツは北海道のもので、東京からは遠いのですが、季節性の基準にも合致しているのです。
myfood:料理はデリシャスでした。日本語では「おいしい」と言うんですよ。お時間をいただきありがとうございました。
*アメリカンシェフ部隊:2012年9月7日にジェームズ・ビアード財団協力のもとDiplomatic Culinary Partnership (DCP)(料理を通じた外交パートナーシップ)をヒラリー・クリントン米国国務長官が設立。DCPは国際的な相互理解を深めるために、食品、ホスピタリティー、食文化の経験等を織り込んだ「スマート・パワー」というアプローチを提案しています。DCPイニシアティブのもと、才能あるアメリカのトップシェフたちによる「アメリカンシェフ部隊」が形成されました。シェフたちは米国国務省とともに料理講習会を開催したり、料理アドバイザーとして様々な公共の外交イベントに参加をする予定です。
【関連ページ】
>>「アメリカ食材辞典:ギンダラ」はこちらから
【関連サイト】
>>「アラスカシーフードマーケティング協会:WEBサイト」はこちらから
- 2013/01/21 第三十九回:シンプルに美味しさを追求する 吉岡浩太さん
- 2012/12/19 第三十八回:「アメリカンシェフ部隊」のメンバー シェフ・アンソニーさん
- 2012/08/24 第三十七回:この料理にこの食材は必要か、常に自問自答する 氏家健治さん
- 2012/07/20 第三十六回:繊細かつシンプルな最先端アメリカ料理を目指す 板垣大輔さん
- 2012/06/20 第三十五回:野菜をふんだんに使うと、アメリカ料理は優しくなる 羽田野久雄さん
- 2012/05/21 第三十四回:アメリカ料理には、アメリカのすべてが融合している ロン・シルバーさん
- 2012/03/30 第三十三回:日本料理をアメリカの食卓に広める デブラ・サミュエルズさん
- 2012/02/21 第三十二回:その味が、なぜその土地に根付いたのかを考える 福田芳子さん
- 2012/01/23 第三十一回:農産物貿易とは、互いに豊かさを分かち合うこと ジェフリー・ウィギンさん
- 2011/12/20 第三十回:パン職人がすすめる"普段使い"のアメリカ産チーズ! 田澤弥生さん
- 2011/11/21 第二十九回:強力ウイルスからパパイヤを守る! ゴンザルベス博士
- 2011/10/20 第二十八回:シンプルを愛するハワイ料理の巨匠 サム・チョイさん
- 2011/09/20 第二十七回:じつは健康食! 安全なアメリカ産ピーナッツを日本へ!ピーナッツミッション来日団
- 2011/08/11 第二十六回:ナショナル・スイカクイーン ホイットニー・コナーさん
- 2011/07/08 第二十五回:CIA卒業、在邦18年のシェフが魅せるリアルアメリカンフード! ディビッド・キドーさん
- 2011/06/01 第二十四回:メニュー提案からアメリカ食材の魅力を引き出す名プロデューサー・青島邦彰さん
- 2011/05/01 第二十三回:日常使いの美味しさを届けたい!長坂将志さん
- 2011/03/30 第二十二回:仕事も料理も段取り上手!ダイアン・シュニッツラーさん
- 2011/02/04 第二十一回:アメリカ健康&機能性食品のエキスパート、ナンシー・チャイルズ教授
- 2011/01/07 第二十回:カリスマ料理ブロガー、ヤミーさんに聞くカルローズの魅力
- 2010/12/07 第十九回:日本人オーナー辻本憲三氏が手がける、珠玉のカリフォルニアワイン
- 2010/11/01 第十八回:スージー・ルース米国大使夫人に聞くサンクスギビングデー
- 2010/10/28 第十七回:ジョージア州ピーナッツ生産地視察ツアー報告!
- 2010/09/22 第十六回:若き天才がカリフォルニアで勝負する新しいラーメンの形
- 2010/06/14 第十五回:農業でつながる日米の友好関係
- 2010/01/28 第十四回:駐日首席公使はスーパー親日家!
- 2010/01/20 第十三回:CEOのお勧めは、くるみチャーハン?!
- 2009/12/21 第十二回:大和撫子が造るエレガントなピノ・ノワール
- 2009/10/23 第十一回:米国食肉輸出連合会の会長は黒帯の親日家!
- 2009/09/24 第十回:食、旅、豊かな時間。日米文化の懸け橋。
- 2009/08/21 第九回:アメリカンドリーマーを作ったBBQソース!
- 2009/07/22 第八回:アジアにSuperFoodの広めたパイオニア
- 2009/06/22 第七回:アメリカは医療も食材もアンチエイジング先進国!
- 2009/05/22 第六回:アメリカ大麦農業に見る"顔が見える農業"と"日米交流"
- 2009/04/24 第五回:V5キャンペーンシェフ、小枝さん登場!
- 2009/03/23 第四回:作り手が語るワシントンワインの魅力
- 2009/02/23 第三回:アリニアシェフ/オーナー グラント・アケッツ氏(世界料理サミット 2009東京テイストアメリカ代表)
- 2009/01/21 第二回:アメリカのチーズ第一人者であるレジー・ハイス氏
- 2008/12/12 第一回:Silveradoスーパーヴァイザーシェフ、ロナルド・ジャンティルさん














