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クローズアップインタビュー

クローズアップインタビューVol.33 日本料理をアメリカの食卓に広める デブラ・サミュエルズさん

クローズアップインタビューVol.33 日本料理をアメリカの食卓に広める デブラ・サミュエルズさん

クローズアップインタビュー第33回目はデブラ・サミュエルズさんです。食べ物・旅行ライターにして料理教師。日本での生活経験から和食にも精通しているデブラさんは、アメリカ人向けにアメリカ食材を使った和食料理本も執筆されています。日本だけでなく、豊富な海外生活を重ね「食は文化の橋渡し」と語るデブラさんに、和食の魅力やアメリカの食文化を語っていただきました!



myfood:日本で生活されていたのは、いつごろのことですか?

1972年/二十歳のころ赤い着物を着てデブラ:はじめて日本を訪れたのは1972年です。コルゲート大学在学中に、ホームステイで大分県津久見市の大石ファミリーにお世話になりました。言葉と文化を学ぶのに最適な方法だったと思います。

myfood:そのときに日本料理を学んだのですね?

デブラ:大石夫人は私たちがお世話になる半年前に亡くなられていました。そのため大石家の台所はおばあちゃんが切り盛りしていたのです。私はおばあちゃんの料理を手伝うことで日本食を知るようになりました。じつは、それまで私は日本食になじみがなかったのです。私が育った当時のニューヨークでは、エスニックフードといえばチャイニーズかイタリアンでしたから。そんな私に味噌汁の作り方や豆腐を片手の上にのせて切る方法、お米のとぎ方をおばあちゃんは教えてくれました。ですから今でも味噌の匂いを嗅ぐと、おばあちゃんの台所を思い出します。

myfood:デブラさんにとって、大石家のおばあちゃんが最初の日本料理の先生だったんですね。

1977年/息子のブラッドにうどんを食べさせてるところデブラ:ホームステイから5年後に、当時大学院生だった夫と生後5ヶ月目の赤ちゃんを連れて日本に戻り、東京の勝どきに住みました。ご近所の方たちは英語を話せませんでしたし、当時の私の日本語はかなり初歩的です。それでもご近所の皆さんは私たちをまるで本当の家族のように、毎日一緒に買い物へ連れて行ってくれたり、食事を作ってくれたりしました。ですからご近所さんの台所も私にとって日本料理を学ぶ場所となったのです。最初の冬は何回も鍋物を作りましたよ。私の好物は水炊き。子供の時から親しんでいたチキンスープを思い出しました。それからどこへ引っ越しても、ご近所の皆さんが私の先生でした。多くのテクニックや特別な料理を習いました。

myfood:たくさんの先生から学ぶことで、デブラさんの日本料理のレパートリーは広がっていったんですね。

1984年/家庭料理教室風景デブラ:1983年から1984年に日本へ戻った時は3歳と6歳の子供がおり、他の日本人女性たちと一緒に1年間、家庭料理教室へ通いました。そこで学んだ出汁のとり方や巻き寿司、出汁巻き卵、煮物の作り方といった日本料理の基本は今も非常に役立っています。日本へ戻ってくるたびに、私はなにか新しいことを学ぶようにしています。家族のために毎日料理をすることがこれを助けてくれました。何かを料理する時にわからないことがあったら、スーパーマーケットで働く人たちが大きな助けになります。私には日本料理を教えてくれる日本人のお母さんや姉妹がいるわけではありませんが、40年以上の間に本当の家族のような何十人もの友人と知り合うことができました。

myfood:デブラさんが見てきた40年間に、日本の食生活はどのように変化したと感じていますか?

デブラ:本当にすごく変わりました!
少なくとも東京では今いつでも世界中の食品が手に入ります。これは日本の皆さんの外国料理に対する興味と寛大さの表れでしょう。スーパーマーケットでもレストランでも、食のバラエティーが劇的に増えていますね。それから海外で勉強したシェフによる高級ベーカリーやビストロ、ショコラティエが増えました。
私が個人的に大きく変化したと感じているのは居酒屋スタイルのレストランが増えたことですね。独創的な料理が増えて、食べるのも楽しいです。80年代90年代に食事に誘われた時はよく会席料理だったものです。日本料理の美しい代表料理とでもいいましょうか。でも最近は気軽な料理にも連れていってもらえて、それも気に入っています。
そして一つだけ変わらないことがあります。それは細かな気配りです。英語に"it's the little things that count."(細かいところが何より大事)という表現があります。レストランでも家庭の食卓でも、まさにこの言葉が日本人の食に対する考え方を表現していると思います。

「My Japanese Table」myfood:デブラさんの著書「My Japanese Table」は、アメリカの家庭で普通に手に入る食材を使って伝統的な日本料理の作り方を教えていますね。デブラさんの日本料理のクラスで使っているアメリカの食材について教えてください。

デブラ:どんなエスニック料理でも、アメリカ人向けにレシピを書く場合は彼らに受け入れやすいことが大切です。料理の方法だけでなく材料も。たとえばアメリカには日本ほど魚の種類がありませんので、サーモンやタラ、ホタテ、エビを使うレシピに専念します。これらの食材はアメリカのキッチンでも広く使われている食材ですので、照り焼きサーモンや寄せ鍋、ホタテ田楽といったレシピに簡単に使えるわけです。サバを使ったレシピは赤身のブルーフィッシュ(ムツ科)に置き換えています。サバはあまり手に入りませんし、風味も油もアメリカ人には強すぎと感じられるからです。ブルーフィッシュは赤身ではありますがさほど強い風味はありません。
お米はヘルシーなブラウンライス(玄米)をアメリカ人は好みます。ですから手巻き寿司にはカリフォルニア米(短粒種)にブラウンライスを混ぜます。これって日本では考えられないでしょうが、本当に美味しいですよ。見た目がちょっと良くないですが(笑)。

myfood:白米と玄米のシャリは確かに見たことありませんね(笑)。調味料などはどうでしょうか。お醤油などが手に入らない場合は何で代用するのですか?

デブラ:醤油はアメリカの台所に常備されていますよ。ケチャップのように。だからもうエキゾチックとはいえなくらいです(笑)。他に、日米どちらでも手に入るような調味料、たとえばマヨネーズなどはなるべくアメリカのブランドを使います。でも味噌は日本かアジアですね。砂糖は日米でまったく違います。アメリカはグラニュー糖に近くて、レシピではこちらを使用しています。日本で一般的に使われている上白糖は水分があり、それとは仕上がりが少し違いますが大丈夫です。

myfood:デブラさんは日本各地で伝統的なアメリカ料理の作り方も紹介しています。そのとき日本での食材準備はスムーズですか?

デブラ:日本ではよくバナナブレッドなどを焼いてプレゼントしますが、アメリカと同じ小麦粉を見つけるのは大変でした。日本の一般的な小麦粉より少し粗いので、焼き上がりが違ってくるんです。インターナショナルなスーパーマーケットで探す必要がありますね。多くの友人や料理教室の生徒がアメリカのレシピを試す際に、はじめは何故これほど違って出来上がるのか理解できませんでした。小麦粉の違いが理由の一つだったのです。もう一つベーキングのカテゴリーでは、ブラウンシュガーとホワイトシュガーを見つけるのが大変です。ベーキングは科学に近いので、こういったことが重要なんです。

myfood:デブラさんは日本人とアメリカ人に双方の料理を教えていますね。「食は文化の橋渡し」とおっしゃるデブラさんにとって、それを象徴する料理やシチュエーションがあれば最後に教えてください。

「My Japanese Table」デブラ:食卓を共にすることと、家庭で作った食事を分かち合うことはこの上ない最高のおもてなしだと思っています。アメリカではサンクスギビングのとき、宗教の意味合いもなく誰もが本当のアメリカ料理を楽しみます。ベジタリアンでさえターキーがメインです! 付け合せにはいっぱい野菜がありますしね。何よりも家族や友人が集まり日々の幸せに感謝することが大切だと象徴しているのです。ボストンの我が家では、サンクスギビングのときいつも友人や主人が教えている海外からの生徒達を招いています。特別料理であるパンプキンパイやローストターキー、クランベリーソースなどたくさんの食事を味わうので、とくに海外の人たちにはとてもユニークな経験になっていると思います。私が日本にいて人を招待する時は、何月だろうと関係なくサンクスギビング・ディナーを作ります。
日本料理では季節の鍋物がこれに近いと思います。コミュニティー鍋、とでもいいましょうか。みんなでつつきながらなんて楽しい食べ方ですよね。堅苦しくないし、美味しくて話も進みます。それにお祭りのストリートフード。私は縁日や屋台の食べ物が大好きです。お店の人たちはフレンドリーで面白い人たちばかり。全体の雰囲気が楽しくてリラックスしている。全部のお店をまわって食べれるくらいお腹が空いていたら良いのに、と思うくらいです(笑)。
でも食を通じて仲間と楽しむといえば、お花見にかなうものはないでしょう。桜の花びらがすこし見え始めた頃からはじまる盛大なアウトドアパーティーは、国民的なレジャーですよね。ビニールシートに仲間で座って酒に歌にもちろん食べ物をいっぱい分かち合う。日本のカレンダーのなかで一番楽しいイベントの一つです。

myfood:桜舞う季節に、素敵なお話をありがとうございました!


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