Home> 特集記事> 季節のイベント 2016.09_02

敬老の日をきっかけに「食」の大切さを考えましょう~「介護食(高齢者)向けアメリカ食材栄養セミナー」~



 9月19日は敬老の日。我が国はすでに高齢化社会に突入しており、高齢者社会に関するニュースを見ない日はないほどです。
高齢化社会の中で、高齢者の皆さんはどのように健康な老後を過ごすか、支える立場にいる側はどのように介護をしていくか、これらは日本人全体の大きな課題となっています。

 そんな高齢化社会において、健康な老後を過ごすために大切な要素の1つが「食」です。
一昔前は、白米、魚、おひたしに味噌汁があれば十分!という方が多くいらっしゃいましたが、今はいかがでしょうか。身近にいらっしゃる高齢者の方々の食べ物の好みを観察してみてください。
ここ数十年の間に、日本人の食生活は大きく変化をしてきました。様々な周囲の環境の変化や豊富な情報、海外旅行などといった経験によって、日本人の生活そのものが変化したために、食生活も変化したのです。
 今の高齢者は、昔に比べておそらくもっとバラエティに富んだ食生活を楽しまれてきた皆さんですから、どんなに高齢になってもやはりそんな経験や記憶が元気の源として常にお持ちのはずです。

 また、近年の研究では高齢者も一般成年と同じだけのカロリーが必要で、さらに高齢者にこそ特に摂取してもらいたい栄養素があることが知られるようになりました。アメリカ産食材の中にもそのような栄養素を多く含むものが多々あり、"まずは日本の食品企業の皆さんにそれらを知っていただこう"と、アメリカ大使館農産物貿易事務所(ATO)では、今年6月に東京で、主に食品メーカー・ケータリング企業様向けに「介護食(高齢者)向けアメリカ食材栄養セミナー」を開催しました。


長寿社会の食と介護 ~予防と抗重症化~

井上浩義先生による講義 セミナーでは慶応義塾大学医学部教授の井上浩義先生から「長寿社会の食と介護 ~予防と抗重症化~」をテーマに広い見地から介護食についての講演、また赤堀料理学園校長の赤堀博美先生から、アメリカ食材を使った美味しくて簡単に作れる栄養価の高い「ユニバーサルデザインレシピ」を数点ご紹介いただきました。  今回の講演の中から、myfood読者の皆様へ高齢者に必要な栄養とレシピについての部分をかいつまんでご紹介したいと思います。

 井上先生の講義の中で紹介された厚生労働省長寿科学研究班のデータでは、在宅介護高齢者のうち低栄養状態になる恐れがある高齢者が52%、低栄養状態にある高齢者が13%、つまり全体の65%も低栄養状態またはその恐れがある在宅高齢者がいるということでした。また、カロリー摂取と死亡率の関係をみてみると、カロリー過剰もカロリー不足も死亡率に大きく関係していることがわかりました。

 高齢者向けの介護食に求められる要件は大きくわけて4つです。「やわらかい食品であること」「年度調整食品であること」「総合栄養食品であること」そして「経済性および手軽さ」です。また、栄養面では以下の4つの提案がありました。

1. 食物繊維を摂りましょう!⇒大腸がんリスクを軽減(おすすめの食材:プルーン、ナッツ、レーズン、ポテト) 

2. たんぱく質を摂りましょう!⇒健康な生活にかかせない骨や筋肉のため (おすすめの食材:ビーフ、ポーク、ターキー、チキン、乳製品、ホエイたんぱく質) 

3. 抗酸化物質を摂りましょう!⇒酸化ストレスにより血管が細くなってしまうのを防ぐ (おすすめの食材:ブルーベリー、プルーン、ナッツ) 

4.オメガ3を摂りましょう!⇒心血管疾患リスク軽減 (おすすめの食材:くるみ、サーモン)



ご自宅で作れる!
アメリカ食材を使った「ユニバーサルデザインレシピ」

赤堀博美先生による講義 赤堀先生の講義では、高齢者・介護の必要な人向けに咀嚼・嚥下困難、低栄養、味覚障害に配慮した食品「ユバーサルデザインフード」という考え方についての紹介がありました。高齢者の健康を保つため、老化を遅らせるための食生活指針(3食のバランスを良く取り欠食は絶対避ける、油脂類の摂取が不足しないように注意する、動物性たんぱく質を十分にとる、等)を教えていただきました。

 また、たんぱく質(筋肉の衰え、体力や思考力の低下を防ぐ)、カルシウム(骨と歯が弱くなる、神経質になる、イライラするなどを防ぐ)、鉄(忘れっぽい、根気が無い、貧血などを防ぐ)、亜鉛(味覚障害を防ぐ)、ビタミンB6・B12(皮膚の炎症、運動失調、悪性貧血などを防ぐ)、食物繊維(便秘を防ぐ)を上手に取り入れるために、アメリカ産の食材(アメリカ産のビーフ、ポーク、サーモン、プルーン、くるみ、レーズン、ブルーベリー、アーモンドミルク、豆乳、ホエイタンパク、ポテト)を使用したオリジナルレシピを開発していただきました。

 (上記のレシピはこちらをご覧ください)

赤堀先生に開発していただいたレシピは高齢者だけでなく、家族全員が美味しくいただけるものとなっています。敬老の日を機会に、是非周りの高齢者の皆さんの食事をちょっと観察していただき、家族・地域の皆さん全員の健康な生活を目指しましょう。



------------------------------------------------

井上浩義 (いのうえ ひろよし)

1961年福岡県生まれ。1989年九州大学大学院理学研究科博士課程修了。1989年山口大学医学部助手(生理学教室)等を経て、1998年久留米大学医学部専任講師(放射性同位元素施設)、助教授を経て、2006年久留米大学医学部教授(放射性同位元素施設長)、2008年慶應義塾大学医学部教授(化学教室)、信濃町地区放射線取扱主任者,理学博士、医学博士。
日本抗加齢医学会評議員、日本医学教育学会評議員、一般財団法人日本友愛協会理事、日本アイソトープ協会放射線安全取扱部会関東支部長、大学等放射線施設協議会常議員、特定非営利活動法人新世紀教育研究会理事長なども併任。



赤堀博美 (あかほり ひろみ)

1965年東京都文京区生まれ。日本女子大学大学院修了。赤堀料理学園6代目校長。管理栄養士。日本女子大学非常勤講師。十文字学園女子大学非常勤講師。日本フードコーディネーター協会常任理事。エバラ食品工業(株)社外取締役。サークルKサンクスの商品監修を担当。
テレビの料理番組やドラマ、バラエティー番組やドラマでの料理指導やフードコーディネート、食品メーカーのメニュー開発などを担当。管理栄養士としても、数多くの講習会やテレビ出演、出版物での栄養指導を行っている。

------------------------------------------------








IMG:敬老の日をきっかけに「食」の大切さを考えましょう ~「介護食(高齢者)向けアメリカ食材栄養セミナー」~