日常のレシピに欠かせない食材、鶏卵。普段づかいとしては「生卵」を食卓にあげることが主流でしょうが、いま製菓、製パンの世界では「乾燥卵」というチョイスも導き出されています。乾燥卵とは、液全卵や液卵黄に殺菌、乾燥、シフター(粉質の安定、異物除去)、充填の処理をほどこしたもの。長期保存や常温保存を可能にし、粉状に姿を変えた「たまご」なのです。世界一厳しいといわれる検査法や管理のもと生産されるアメリカン・エッグの一部は、こんな形で日本にも輸入されているわけですね。


会場となった東京瓦斯業務用厨房ショールームには、最終審査にノミネートされたお菓子やパンと、緊張のおももちがずらり。ATOネルソン所長の開会の辞が場をなごやかにすると、各賞の受賞作品が発表されました。


柴田書店・吉田編集長の乾杯の辞をきっかけに開かれた懇談の場では、あたたかな雰囲気のなかにも緊張感が。6名の受賞者が審査員を囲み、講評とレクチャーを受けておられました。せっかくなのでマイクを通してご講評を、と水を向けられた伊原シェフはこう語ります。「粉(=乾燥卵)という素材の選択をポジティブにとらえ、『粉だから』をメリットにしてほしいです。生卵と粉のメリハリを利かせて、粉に機能性以上のものを見つけてほしい。味の差や美味しさについては、もっと研究する余地があると思います」。そして永井シェフはこんなことも。「みなさん乾燥卵を特別な使い方にすることなく、『引き立てる』ということができていると思います。作品は見て綺麗ですし、バランスもとれています。ただし、このコンテストはまだ初回。たくさんの可能性が残されていると思います」とのこと。
今回はあいにくの豪雨のさなかの開催でしたが、非常に活発な熱気あふれる授賞式となりました。さらに切り拓かれていく「たまご」の可能性を、またご報告できればと思います。
