オフィス街や大きな公園などに、どこからともなく威勢よくやってきた「美味しいもの屋さん」が大きな行列を生んでいる――。そんなシーンを、映画などでご覧になったことはないでしょうか。近年では日本の都市部でも目にするようになってきたキッチン・カーですが、流行りのもとをたどればそれはアメリカ。本国では特にここ数年のグルメ業界を大きく揺らす、着実なムーブメントとして話題をさらっているのです。

どんなに人気のトラックだとしても、地図に固定されないお店ということもあって、リピートするのも難しいのでは、と疑問を持たれる向きもあるかもしれませんね。そのあたりにも抜かりはありません。近年では店舗側がSNSを駆使して、出店予定などをファンたちに投稿、交流。むしろ彼らの神出鬼没さが話題を呼んで、「追っかけ」を楽しむグルメたちを増加させているのだそうです。時代性に即応したビジネスができるのも、シェフらにおける「フードトラックという選択」自体が、現在のアメリカ経済を照射するものだからかもしれません。
数十年を重ねるフードトラックの歴史において、2008年における米国経済低迷というきっかけが変節を生んだことも確かです。飲食業界において資金繰りなどの問題からレストランを経営することの難易度が上がった頃、初期投資も少なく済み、味はもちろんのことマーケティング戦略の巧拙によって勝負を賭けられるフードトラックという選択が、多くのシェフたちにとって魅力的なものとなりました。そして多くのグルメたちの心をつかんだトラックが、いつの日かレストランとして生まれ変わることもある――。まさに我々の思う成功譚、「アメリカン・ドリーム」を体現するような潮流ともいえるでしょう。
映画『シェフ』のフードトラック・レシピ再現試食会


サンドウィッチの紹介
The Elvis
ピーナッツバター、バナナ、レーズンになんと、ベーコン。日本人にはあまり馴染みのない甘じょっぱい食感が、実は後を引くおいしさ。

Pulled Pork Sandwich
ポークに、あえて硬めのサボイキャベツを用いたコールスローを添えて。

Cuban Sandwich
ピクルス、ハム、チーズ、ポークといったサンドウィッチの王道に、カイエンペッパーやクミン、オレガノ、月桂樹の葉などを加えてスパイシーに。オレンジとライムのジュースも隠し味です。映画の中でもとびきりチャーミングなシーンで登場します。

Wisconsin Grilled Cheese Sandwich
チェダー&グリュイエルチーズ、玉ねぎ、トマト、ハム。

Po' Boy
ホキのフリッター、レタス。カイエンペッパーとホースラディッシュを効かせたタルタルソースが決め手。映画の中ではホキではなく牡蠣がチョイスされていました。

Texas Style Chopped Beef Sandwich
刻んだビーフをオーブンで焼き、グリルした玉ねぎとともにバーベキューソースを添えてシンプルにいただく。ここでも健闘するのがカイエンペッパー。

