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安全安心な栄養フルーツ=フィグの冒険



子どもの食卓からバックパッカーの栄養源まで

フィグヘルシーな栄養をあくまで手軽に摂取したい、という思いは、忙しい現代人に共通する願いかもしれません。食物繊維をたっぷり含み、マグネシウム、カルシウム、カリウムも豊富、しかもコレステロール、脂肪分、ナトリウムすべてゼロの食品があるのだとしたら、それは夢のようなものでしょうか......。夢ではありません。それが「カリフォルニア産フィグ(=いちじく)」。いまから少しだけ、その生まれをたどってみませんか。

甘味のみならず酸味、滋味などさまざまな表情を見せるカリフォルニア産フィグは、どのような土壌に生まれたのでしょうか。
古代オリンピック競技者のトレーニング用食材としても親しまれたフィグは、地中海や中東諸国において多産、豊穣、優美さの象徴ともされています。中世になると兵士たちの闘志を高める食物としても愛用されたことがわかっています。

フィグ畑こうしたフィグのアメリカにおける生産地であるカリフォルニア・サンホアキン渓谷は、暑く乾燥しながらカリフォルニア・ワインとも共通するテロワール(土壌)を持つため、カベルネやピノ・ノワールなどの芳香にも似た繊細な味をもたらします。そうして手厚く育まれたフィグは生食用、ドライ用と別々の道をたどることとなります。ホールドライフィグは地中海料理に最適で、フィグピザやアペタイザーも務めます。また加工されたフィグもアメリカ全土はもちろんのこと海外にも進出し、特に「フィグニュートンペースト」と呼ばれる形状はアメリカの一般的な食卓の上に選ばれ、子どもから大人までの生活を担っていることでも知られます。一方フィグペーストは、硬さ・粘度・フレイバーの違いを豊富に持ち、さまざまなニーズに応えることとなっています。またフィグ・ナゲットとフィグ・ナゲット呼ばれる、固められフレーク状になったフィグは、アメリカのバックパッカーの9割が持ち歩くとも言われるもの。いかにアメリカ人の信頼を厚く得ているかがわかる逸話です。こうしたフィグは、自然由来の「酸」が香りを高めるため、スパイスとしても有能ですし、料理の複雑さを深めたり、味のバッファを取ることにも優れているのです。



Be California FIG Inspired

カリフォルニアフィグ協会の主催するイベント会場風景と、これだけの豊かで楽しい知識を得たのも、わたしたちmyfood編集部が、カリフォルニアフィグ協会の主催するイベントに参加したからです。東京アメリカンクラブのボールルームに甘くムードを作るBGMは、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」。そこに気付いたシェフや輸入関係者、プレスなど座席の一同がにやりとしたところで、会は穏やかにスタートしました。わたしたちは多彩なスピーカーからフィグの歴史をたどり、普及を知り、そしてアメリカ料理界の巨匠シェフ、アメリカ料理界の巨匠シェフ、ロバート・デル・グランデ氏ロバート・デル・グランデ氏がオープンキッチンで披露する、フィグを用いた料理の数々を味わいました。カリフォルニア大学でバイオケミストリー学の博士号を修得しつつ、テキサス州ヒューストン市内の"伝説"を長らえるレストランRDG + Bar Annieのオーナー兼エグゼクティヴシェフとなったグランデ氏は、フィグの味わいの秘訣を、盛んに「セイボリー(savory)」と評したことが印象的です。これは日本語に訳すことの難しい感覚なのですが、いうなれば、甘味を排した、複雑で薫り高い旨味、酸味、香味を指すもの。氏の披露したフルコースはタイ風、アジアン風、カリフォルニア風とかるがる国境を越えたものでしたが、それも「セイボリー」でシェフ自身の想像力を幅広く高めさせる食材=フィグが、テーマにあったからなのかもしれません。

カリフォルニアフィグと海藻パウダーの衣がけアメリカンビーフステーキ、アジアンフィグステーキソース添えコースのメインとして提供されたのは、「カリフォルニアフィグと海藻パウダーの衣がけアメリカンビーフステーキ、アジアンフィグステーキソース添え」。フィグ・パウダーや挽いた昆布、ジンジャーパウダーなどをUSビーフステーキの衣とし、15分ほどローストして寝かせます。そしてトマトペーストと米酢、フィグ・ジュースにスパイス類を加えたアジアンスタイルのステーキソースを寝かせたステーキにまわし掛け、米酢でマリネしたフィグ・ナゲットをトッピング。テロワールを共にするカリフォルニア・ワインを傾けながらも、ナゲット、ジュース、パウダーと、三種のドライフィグをアレンジした滋味深くもパンチの効いた一品を一同は堪能することとなりました。

フィグアメリカ産ドライフィグの100パーセントシェアを誇り、年間2200万ポンドが生産されるカリフォルニア産フィグ。それは他国産のものよりも厳密な生産ルール付け、格付けがなされていることから、わたしたち日本人の舌に乗るときにも安全、安心なものといってよいでしょう。懐石文化に親しみ、薄味の違いの分かる日本人にこそ、料理のインスピレーションをかきたてる「セイボリー」な味わいは、これから一層のこと、広がるものなのかもしれません。










IMG: 安全安心な栄養フルーツ=フィグの冒険(イメージ)