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スロウな食卓を、ポット料理で



じっくりコトコト、アメリカの味

さまざまな野菜とともに煮込まれた大ぶりの肉を取り分けて、熱々を頬張りながら食卓を囲む――こうした家庭のシーンを、欧米映画などでご覧になったことはありませんか。あるとするのなら、それは「ポット料理(=Pot Roast)」。オーブンやストーブの熱によって、肉や野菜、豆などをじっくりコトコトと煮込んだ鍋(=ポット)のことを指しています。これ、アメリカではとってもポピュラーな調理法なんです。

ビーフシチュー鍋を使って、とろ火に長時間あてる。この基本さえ押さえていれば、無数のレシピが広がります。なかでもポット料理の"王道"といえば、ビーフ肩ロースを使ったシチュー。作り方はとっても簡単。まずはどっしりと大きな塊肉に塩コショウやお好みのハーブを擦りこんで、少々の焼き目をつけます。こうしてきゅっと表面の締まった塊肉を、玉ねぎやにんじん、セロリといった野菜とともに大鍋に投入し、さらにはひたひたの牛スープやワインとともに「我が家ならではの隠し味」をプラス。これをガスの場合は焦げ付かないよう注意しながら、弱火でコトコトと3~4時間。ほっくり炊き上がったものに、スープを煮詰めて味付けしたグレイビー・ソースを回しかければ完成です。......なんだかお腹が空いてきませんか?

ランカシャー・ホットポットこうしたポット料理のアメリカにおける歴史をさかのぼりますと、植民地時代のニューイングランド料理から派生したものだと言われています。特には「ランカシャー・ホットポット」という、羊肉の塊に大量の玉ねぎとスライスしたじゃがいもを重ねた鍋をまる一日煮込んだイギリス料理がその起源だとか。今では(先に述べた)シチューやチリビーンズ、ベイクドビーンズといった「アメリカ版おふくろの味」から、燻製、蒸し焼きといったアウトドアでも作れる男性的な料理までを含む、アメリカらしく懐の深い調理法といえるでしょう。



シーンに合わせた「お鍋選び」をどうぞ

ダッチオーブンポット料理に使う鍋には、現在さまざまな選択肢があります。たとえば近年アウトドア好きな日本人にも興味を持たれているダッチオーブン。これは鍋と蓋がともに金属でできているので、炭火を上からも下からもかけることができる高気密な調理器具となります。アメリカの西部開拓時代からの歴史を持ち、調理のバリエーションもシンプルかつ豪快なものが多いです。

また、家庭内の日常でさらりと使われるのは、陶器製や金属製の大ぶり鍋。熱したオーブンやストーブ、ガスを使って、のんびりコトコトと煮込みます。

スロウ・クッカーそしてとっても便利で手間の節約になる鍋が、スロウ・クッカーと呼ばれる保温調理鍋。シカゴのNaxon社から1971年に発売となるやいなや、その簡便さからブームとなっていきました。日本における最初のプロダクトは「はかせ鍋」と呼ばれる商品で、その後の我が国では「シャトルシェフ」などの商品が有名でしょう。どのように使うのかご説明しますと、朝方に肉や野菜の仕込みをして電源をONしたなら、あとは長時間放置するだけ。たいていの料理は夕方までにはホックリ柔らかく煮えています。高い保温力と省エネなところが魅力といえる調理器です。

と、ここで少しだけ豆知識。アメリカにおけるスロウ・クッカーには、蓋と鍋をがっちり締める機構がついていることもあるのですが、その理由はというと「持ち運びに便利だから」。ホームパーティ文化、持ち寄り文化の根付いたアメリカでは、大量に作られたポット料理をそのままの形で運搬するシーンが想定されているのですね。

少しばかり手間だけれど、煮込んだスープの味わいと、柔らかく火の通った大ぶり肉の楽しみは、また格別な家庭の時間を作ってくれることでしょう。寒さがゆるんできた昨今とはいえ、まだまだ「熱々な家庭の味」が、わたしたちを魅了してやみません。オーブンで、窯で、ストーブで、ガスで、じっくりとろ火を眺めるもよし。スロウ・クッカーを使いながら、忙しい朝の簡単な仕込みだけをして、夜の出来上がりを楽しみに待つもよし。ポットはいつだって、わたしたちの生活のそばにあります。みなさんも、暖かな笑顔とともに"じっくりコトコト"な味わいの食卓を囲んでみませんか?








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