Home> 特集記事> 季節のイベント 2014.06_02

噛めば噛むほど味が出るアメリカ産の牛肉



アメリカで最も愛されている食材とは?

 ガシガシッとかみ応えのある鶏肉(チキン)、ジューシーな肉汁があふれる牛肉(ビーフ)、口の中に脂があふれる豚肉(ポーク)。アメリカの食材――といえば、やはり最初にあがるものは「お肉」でしょう。
アメリカ人は一説によると一年に鶏肉を32キロ、牛肉を27キロ、豚肉を20キロも消費しているといいます。アメリカのお肉は美味しく新鮮なため、アメリカの国民のみならず、全世界の人々の間で愛されているのです。
ビーフステーキ その「お肉」の中でも、アメリカを代表するものが「牛肉」です。肉汁があふれる分厚いステーキやパンズにはさんでかじるハンバーガー、そしてスモーク(燻製)にしたり、ロースト(あぶり焼き)にしたりと、アメリカでは様々な料理方法が開発されてきました。今回はその牛肉がアメリカに根付くまでの歴史とそこから生まれた調理方法をお話しましょう。



牛肉を大きく普及させた2つの出来事

 アメリカの牛は豚や鶏と同じくヨーロッパからの植民者たちが新大陸に持ち込んだものでした。アメリカで牛肉が普及する大きな転機になったのは南北戦争の終結です。その転機はアメリカの南と北で起きました。はたして、そのふたつの転機とは何だったのでしょうか。
 まずは南で起きた転機についてお話しましょう。南北戦争が終わり、故郷に帰った兵士たちは新たな仕事を探しはじめます。牛の放牧に従事したのはテキサスの帰還兵たちでした。テキサスには広大な土地のあちこちに「テキサスロングホーン」と呼ばれる牛がいたのです。
テキサスロングホーン 「テキサスロングホーン」はテキサス生まれの牛の品種。スペインの開拓者が連れてきたブリアッタという品種に、東海岸にいたオールドベッツィと呼ばれる品種が自然交配して生まれたものだといわれています。1865年にはおよそ500万頭の「テキサスロングホーン」が生息していたそうです。
 南北戦争から帰ってきた兵士たちは「テキサスロングホーン」の飼育をはじめますが、その近辺の地区では牛は二束三文(一説によると一頭4ドル)でしか売れません。そこで彼らは北部へ牛を売ることを考えました。そうして生まれたのが「チザム・トレール(chisholm trail)」。家畜商人たちはテキサス南部からオクラホマを経由して、鉄道の駅があるカンザス州のアビリーンまで約1000マイル(約1600キロ)の距離を牛たちを歩かせたのです。アビリーンから鉄道で運ばれた牛は一頭35ドルから40ドルで売れたとか。カウボーイたちは一攫千金の夢をかなえるために、長い旅を牛たちとともにおくったのです。
 次に北で起きた転機です。南北戦争が終結した1865年、シカゴに肉を貯蔵する「ユニオンストックヤード」が建設されました。複数の鉄道会社が共同で出資したこの施設は、サッカーフィールドにしておよそ27万個分(475エーカー)。場内には総全長200キロ以上の線路が敷かれていました。約2万5000人が働き、一日に3万8000頭の牛が処理されたそうです。こうしてアメリカの全土へ牛肉が広まっていったのです。


品種改良と調理技術の躍進

アンガス種 この牛肉の人気拡大の理由のひとつには、牛肉そのものが美味しくなっていることがあげられます。そもそも18世紀のヨーロッパにおける一般的な牛肉料理は内臓料理が主流でした。そのころのヨーロッパの牛の肉は硬かったため、煮込み料理で使われるくらいしか、料理方法がなかったのです。ところが19世紀に入り、イギリスで品種改良されて、脂肪が多い「アンガス種」が誕生。「アンガス種」はアメリカにも持ち込まれ、柔らかい牛肉は幅広く愛されるようになったのです。
牛肉 そしてアメリカにおいても、牛肉の進化がありました。1940年代に入り、農機具の技術が急速に発展。穀物の収穫量が急上昇したことで、牛への飼料も栄養価が高いものが与えられるようになったのです。とくにとうもろこしを牛に与えることで、牛肉の脂分がぐっと向上。やわらかくジューシーな牛肉を食べられるようになったのです。また、牛肉の保存技術も年々新しいものが発表されています。塩漬けや燻製技術のみならず、1960年代には真空包装技術、70年代には乾燥熟成(ドライエイジング)技術が発達していきました。
 これまでこのmyfoodでもご紹介してきたように、乾燥熟成は牛肉の旨さを引き出す方法。専用の熟成庫で温度や湿度を厳密に管理し、30日以上もの長い時間をかけて、ゆっくり肉を熟成させていくことで、味をギュッと圧縮するのです。


アメリカンビーフが愛される理由

 こうして発展したアメリカの牛肉は、アメリカ国内のみならず世界中から愛されています。アメリカの牛肉は良質のたんぱく質をはじめ、ビタミンB群や鉄、亜鉛、セレン、リンなどをまんべんなく含んでいるため、和牛に比べて脂肪やカロリーも少なく、栄養価の高い穀物飼料がもたらしたビタミンやミネラルも豊富に含まれているといわれます。 牛肉管理(イメージ)また、食肉の安全管理も定評が高いところ。牧草に使う農薬は環境保護庁(EPA)によって厳しく制限されており、食肉加工工場も農務省食品安全検査局(FSIS)の検査官がしっかり監視・指導、牛が病気にかかったときは農務省動植物衛生検査局(APHIS)の獣医官が一頭ずつ生体検査するなど、緻密にチェックをしているのです。また、農薬や医薬品の残留量なども向上からの出荷時に厳しく検査されています。入口(農薬や薬品の使用時)と出口(肉の出荷後)で厳しく管理されているのです。
 なお、アメリカの牛肉には8等級の格付けが、アメリカ農務省によってつけられています。そのうち、3種類が日本に輸入されています。
 「プライム(Prime)」最高級の格付け。サシが入っており、ジューシーさ、柔らかさ、のすべてにおいて優等生の牛肉。高級ステーキハウスや高級レストランで食べることができます。
 「チョイス(Choice)」プライムよりもリーズナブルな牛肉。サシ、ジューシーさ、柔らかさがバランスの良い牛肉。スーパーや食料品店などの店頭で購入できる。
 「セレクト(Select)」赤身が多く、低脂肪・低カロリー。お買得の牛肉。こちらもスーパーや食料品店などの店頭で買えます。
 美味しく健康で安全なアメリカの牛肉は、日本各地のさまざまな量販店や高級レストランで食べることができます。今や私たち日本人に身近なアメリカの牛肉をがっつり楽しみましょう!







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IMG:噛めば噛むほど味が出るアメリカ産の牛肉(イメージ)