Home> 特集記事> 季節のイベント 2013.12_02

クリスマスのスイーツに込められた、その想いとは?



クリスマスは、食べる家族行事
 街のあちこちでイルミネーションが輝き、クリスマスのカラーに染められる季節がやってきました。
 日本では、クリスマスは恋人たちのイベントとして扱われるケースが多いようです。クリスマスのイブ(前日)に男女が外でディナーを食べ、愛を込めたプレゼントを交換するイベントとして楽しんでいる方も多いでしょう。
 ところが、アメリカのクリスマスは日本のそれとは違います。
クリスマスを楽しむ家族 アメリカではクリスマスの日になると、家族が我が家に集まり、ご馳走を食べて、クリスマスのプレゼントを交換します。とてもアットホームで大切なイベントとして行われているのです。
 クリスマスでプレゼントを交換することも、家族で料理をともに食べるということも、キリスト教の核をなす考えの「GIVE=与える」「SHARE=分かち合う」からくるもの。クリスマスという「食べる家族行事(GIVE THANKS and SHARE BLESSINGS)」は、アメリカの「こころ」を体現している催しものなのです。


クリスマスに欠かせないスイーツ
 このアメリカのクリスマスに欠かせないものがスイーツです。
 パイやドライケーキ、そしてクッキーが、食事のあとに出され、それを食べながら家族は歓談し、クリスマスプレゼントを交換します。
ジンジャーブレッドマン クリスマスならではのスイーツで代表的なものは「ジンジャーブレッド」。これはクリスマスツリーのオーナメントとして使われている、ジンジャーやシナモンといった香辛料をつかったクッキーやパイのこと。家のかたちをしているものは「ジンジャーブレッドハウス」、子どものかたちをしたものを「ジンジャーブレッドマン」と呼びます。
 「ジンジャーブレッド」がつくられるようになったのは、ジンジャーやシナモンなどの香辛料に保存性が高いため。同時に、ジンジャーやシナモンは魔除けの意味があったため、クリスマスシーズンに飾られるようになったという説があります。「ジンジャーブレッドハウス」は、グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』に登場する「魔女の家」のモデルだったともいい、中世からドイツに伝わる「レープクーヘン」という伝統的な焼き菓子がルーツであるそうです。一方、「ジンジャーブレッドマン」の発祥は16世紀。伝染病のペストが大流行するイングランドで、ヘンリー8世が感染予防のために生姜入りのパンを広めたそうです。一説によると、そのときに国民が、お腹の出ている国王の姿を模して人型のクッキーをつくったのだとか。
ジンジャーブレッドハウス 「ジンジャーブレット」をクリスマスに飾ることはヨーロッパの各地ではじまり、その風習が移民により受け継がれることにより、アメリカで根付きました。クリスマスに生姜を加えたお菓子を食べることで、無病息災、魔除け、幸運への祈りを込めているのです。





それぞれの家庭の味に込めた想い
フルーツケーキ アメリカでは両親が子供たちといっしょに、クリスマスのお菓子をつくります。それぞれの家庭に「我が家のレシピ」があり、両親はクリスマスの料理を通じて、子供に教えるのです。
「我が家のレシピ」で知られるクリスマスのスイーツというと、フルーツケーキがあげられるでしょう。フルーツケーキはそれぞれの家庭でつくられることが多く、混ぜるドライフルーツの種類やナッツの量などにそれぞれの家庭のカラーが出やすいスイーツです。自家製のフルーツケーキは日持ちがいいため、クリスマスのプレゼントにも使われることがあります。日が経つと味が染みてより濃厚になるため、そのほうが好みという人も多いようです。
クッキー また、クリスマスのプレゼントに使われるもので有名なスイーツが「我が家のレシピ」でつくったクッキーです。教会やコミュニティの行事「クリスマス・スワップ」でこのときにそれぞれの家のクッキーなどをスワップ(交換)するのです。
 どんな種類のチョコレートチップやナッツを混ぜたか。クッキーのバターの量を多くしてソフトタイプに仕上げたか、低温で乾燥させてハードに仕上げたか。2度焼きしてビスコッティのようにサクサクにしたか。クッキーはそれぞれの家庭によってスタイルが違うからこそ「クリスマス・スワップ」が盛り上がるのです。
パイ作り パイも家庭のよってつくり方が違うスイーツです。具を果物にするのか、野菜にするのか。アップル、パンプキン、ぺカン......。その具のフルーツや野菜をワインでじっくり煮詰めてからパイ生地に包むレシピもあれば、あるいはシロップや砂糖で味付けしたフルーツや野菜をそのままパイ生地に挟むレシピもあります。
 これらの「我が家のレシピ」は一家をつなぐ鎹となり、かけがえのない絆になります。「お菓子の作り方や料理の仕方」を次の世代に授ける(GIVE)ことで、世代を超えて我が家の味が受け継がれて(SHARE)いくのです。
 クリスマスはただのお祭りではなく、アメリカに深く根差した食文化の一端といえます。ぜひ、今年のクリスマスは、そんな敬虔な思いを胸に過ごしてみてはいかがでしょうか。









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IMG:クリスマスのスイーツに込められた、その想いとは?/クリスマスツリーとローストターキー(イメージ)