
真夏の日差しを浴びて大きく成長した稲穂が頭をたれる9月。全国の米農家は今の時期、最も忙しい季節を迎えています。今年も豊作といわれ、さまざまな新米が店頭にならびはじめるのが今から楽しみですがー
一方、こんな気になるニュースも聞こえてきます。国民1人当たりのコメの消費量は、食生活の多様化や、外食・中食が増えてきたことを背景に、1962年のピーク(118kg)から2011年には58kgと半減以下にまで減っているのです。2012年発表された総務省の家計調査で去年、1世帯当たりのコメの消費額が、パンの消費額に追い抜かれたことが分かりました。パンよりも食べるのに手間がかかることや、「ごはんを食べると太りやすい」というイメージもその背景にはあるといわれています。
ではアメリカのトレンドはどうでしょう。

実は、アメリカでは、消費は年々伸びています。(とはいえ、日本よりははるかに少なく米統計によると2011年国民1人当たり約14kg)コメをよく食べるアジア系、ヒスパニック系の住民が増えていることに加え、おコメベースの加工品が普及していることなどが主な理由です。おコメがヘルシーというイメージが広がっていることもあります。健康への関心の高い人の間では、白米だけでなく、 その栄養バランスのよさから玄米(brown rice)への注目度も高まっています。
ひとくちにコメといってもその種類はさまざまです。スーパーマーケットでは、日本のコメと同じジャポニカ米の短粒種、インディカ米長粒種、その中間にある中粒種などのほか、高級品として知られる香り米(aromatic rice)まで幅広く売られています。

アメリカでは、コメは主に6州で生産されています。最大生産地は南部のアーカンソー州。同州および隣接するルイジアナ、テキサスなどの南部では長粒種の生産が主であるのに対し、全米第2の生産を誇るカリフォルニア州では、中粒種を生産しています。アメリカはこうした国内で生産されるコメの約半数を輸出しています。と同時に、アメリカはコメの輸入国でもあります。その最大輸入元はタイで、主にジャスミン米などの香り米を輸入しているのです。
"新食感"のおコメ・カルローズ

今、カリフォルニア州の米生産量の約90%が、カリフォルニアのバラという意味の名前のカルローズ(Calrose)という品種のおコメです。日本のおコメである短粒種とタイ米などで知られる長粒種のちょうど中間にあたるジャポニカ系の中粒種です。
日本では、おコメというと、炊きたてのごはんや、つやつやした米つぶが立っているごはん・・・とお茶碗に盛られた白いごはんのイメージがうかびます。一方、このカルローズは、ベタつかず食感が軽いのが特長で、主食というよりはむしろ料理の「材料、素材」として活躍しています。(市販用の袋には「かる~いおコメ、たのしいおコメ」というコピーが!)

というのも、冷えても美味しく、ドレッシングやオリーブオイルとの相性がバツグン。またアルデンテの食感が出しやすく、時間がたってもベタつかないため。こうした特長を活かした、サラダやリゾット、ピラフやチャーハン、パエリアなどのおコメ料理、さらにはスープ料理にまで幅広く活用できます。(レシピサイトには、見ているだけで楽しくなってくるバラエティ豊かなレシピが・・・
>>「USAライス連合会/レシピ集」はこちらから)

アメリカ米のマーケティング団体USAライス連合会日本代表の小島由美さんによると、日本でも、プロの料理人の間で、カルローズ米をひとつの食材として野菜感覚やパスタ感覚で使うというアプローチが、徐々に広がり始めているそうです。

この夏には、シェフを対象とした第1回「カルローズ」料理コンテストが開催され、和のテイストが感じられる繊細な作品から新鮮な食材とを活かした作品、オリジナリティあふれる斬新な作品まで、199もの見事な作品の応募があったそうです。最優秀賞に輝いたのは、「ナチュラルセンスいのせ」の林武人シェフが考案した、おコメをつかったスープ仕立ての逸品「Surprise~シュープリーズ~」。
>>「USAライス連合会/カルローズ料理コンテスト」はこちらから(その素材感と創造性が溢れる迫力に、どんな食感なんだろう、どんな味なんだろうと、思わず食欲をそそられます・・・。)
偶然ながら、カルローズの特長を生かしたお料理として、ニューヨークで予約がなかなかとれないほどの人気ベジタブルレストラン「ダート・キャンディ」のシェフにご提案いただいた2品のお料理もスープ仕立てだったとのこと。(料理通信10月号でご紹介)
同じおコメを使ったスープでも驚くほど異なる「スープ仕立て」になり、スープに限らず、新しい料理に取り組むシェフの創造性を刺激してやまない・・・そんな食材としての自由さもカルローズの特長のひとつかもしれません。

温かくて米粒が立った「炊きたてのごはん」とは一味もふた味も違った、カルローズのレシピ集やレシピコンテストで紹介されているようなおコメ料理の数々。こうした新しくて"たのしい"おコメの使い方が広がることで、日本のお米も含めた広い意味での「お米」への関心が高まる可能性もありそうです。