
大自然の恵みに感謝し、生産者の声をいかに上手に消費者へ伝えるかをテーマとするバーバーシェフにとって、風評被害に悩む生産者たちの苦労は他人事ではなかったようです。日本国内の復興支援が『絆』をテーマとしていることについて、バーバーシェフは「食の中にも絆は生きている」と語りました。
「人と人との繋がりだけが絆ではありません。東北には美味しい食材がある。その生産者がいる。生産できる環境がある。環境とは土であり、バクテリア一つ一つまでが食材と有機の絆で繋がっている。とくに東日本大震災のような甚大な自然災害から復興するときは、こうした大きな絆が強い意味を持つでしょう」
今回の来日で本格的な日本料理を体験したバーバーシェフは、その食文化にも深い感銘を受けたといいます。
「(ミシュランで3ッ星をとった)『次郎』という寿司屋に行きました。そこでの寿司の供され方、セレモニーのような雰囲気、そういう一つ一つに長い伝統を感じました。これはとても羨ましいことです。アメリカにはそうした歴史がありません。『日本料理とは何か』と尋ねれば、複雑かもしれないがいくつかの答えが出るでしょう。では『アメリカ料理とは何か』と尋ねてもはっきりとした答えは出てこない。それがアメリカ料理の良さであり難しいところです。
アメリカにも良いシェフがたくさんいて、その数は最近さらに増えました。食べる側も楽しむ力がついてきた。 農家もより美味しい農産物を作れるよう努力している。こうした流れは過去30年のアメリカ料理でもっとも大きな変化といえるでしょう。私はサステナブル(持続可能)な食と農をそれほど意識したことはありません。ただ、シェフとして美味しい食材を求めた。そして美味しい食材は良い農業に、良い農業は良い環境に支えられていることに気づいただけです。日本にはこうした食文化がすでに根付いている。被災地にも根付いていることでしょう。この食の絆を見つめ直すことで、被災地復興はさらに前進すると思います」



常に変化するアメリカ料理において、現代の牽引役ともいえるダン・バーバーシェフが提言する日本版『ファーム・トゥ・テーブル』のススメ。収穫の秋だからこそ、より胸に沁みる言葉を残して、G9メンバーはそれぞれのレストランへと帰って行きました。
