FOOD2040総括責任者のクリストファー・ケント氏は、世界レベルの消費者行動の洞察的分析において17年の経験を持つ未来学者です。ケント氏はFOOD2040を取りまとめるにあたり、食と農に関する6ヶ国75人の専門家たちから意見を集めたそうです。消費者動向、競争と規制の状況、食料技術、食と農の流通と梱包、環境と資源という5分野での質問を用意してインタビューする。その結果をすべて合成して仮説を立て、第2ラウンドではその仮説が正しいかを専門家たちに聞き取り調査する。この地道な作業は米国と日本を始めとする東アジア各国で繰り返されました。そうしてFOOD2040はより洗練されていったのです。
「ドール理事長とFOOD2040について議論していたとき、私は理事長からシンプルだけれど興味深い質問をされました。食と農の未来を予測する報告書はたくさん出ています。しかしどれも同じトーンでした。人口が多すぎて食料が不十分になるというものです。これに対して理事長は『もしもみんなが間違っていたら?』と質問しました。食料不安という問題に焦点を当てて調査を進めるうちに東アジア、日本というものがとても興味深いケーススタディになるだろうと思ってきました。ちなみにこの調査結果は予言ではありません。未来は一つではなく一連の未来というものが有り得ます。未来への洞察を提示し可能性を模索してもらうというのが私たちの仕事なのです」(クリストファー・ケント氏)
「ドール理事長とFOOD2040について議論していたとき、私は理事長からシンプルだけれど興味深い質問をされました。食と農の未来を予測する報告書はたくさん出ています。しかしどれも同じトーンでした。人口が多すぎて食料が不十分になるというものです。これに対して理事長は『もしもみんなが間違っていたら?』と質問しました。食料不安という問題に焦点を当てて調査を進めるうちに東アジア、日本というものがとても興味深いケーススタディになるだろうと思ってきました。ちなみにこの調査結果は予言ではありません。未来は一つではなく一連の未来というものが有り得ます。未来への洞察を提示し可能性を模索してもらうというのが私たちの仕事なのです」(クリストファー・ケント氏)
そうして始まった結果報告は主に以下のようなものでした。
・生物科学は東へと進行する
東アジアは研究とテクノロジーへの莫大な投資、さらに膨らむ食料需要を原動力として生物科学のリーダーへの道を歩んでいる。ここで日本はバイオ技術についてのスタンスの確立を迫られる。消極的であった場合、その分野で中国から大きく離されるだろう。
・中国市場の拡大と信用度の重要性
2040年には世界の食料および農業の市場は中国の志向と嗜好、ニーズと発展の影響を強く受けて形作られるようになる。そして安全性を実証できる食品供給者が消費者から信用され主役となる。これについて中国は発展途上である。2040年には安心を与える食料とそうでないものとの間に相当な価格差が生まれる。
・アジアの伝統的なハイテク食生活
高齢化と飽食に直面する東アジアでは、食生活の健全性が強化される。アジアの健康に関する伝統と近代科学が融合する。医と食の境界はあやふやとなり、そこには十分なマーケットができる。欧米式食生活は見直され、世界的にバランスを重視した食生活がさらに進行する。
・キッチンがなくなるアジア
2040年には日本の食品の70%以上が家庭外で調理されるようになる。その結果、食品は製品からサービスへと移行する。消費者向けの食材市場は縮小する。キッチンは買ってきた食事を再調理または再加熱することがメインになる。
・新たな超ニッチ化時代
食品・食材の差別化と付加価値化がさらに進行し、より細分化された新たなニッチ製品・市場が創造される。ニッチ需要を満たすためのバイオ技術、超高付加価値食品の供給者として日本の役割が期待される。
・生物科学は東へと進行する
東アジアは研究とテクノロジーへの莫大な投資、さらに膨らむ食料需要を原動力として生物科学のリーダーへの道を歩んでいる。ここで日本はバイオ技術についてのスタンスの確立を迫られる。消極的であった場合、その分野で中国から大きく離されるだろう。
・中国市場の拡大と信用度の重要性
2040年には世界の食料および農業の市場は中国の志向と嗜好、ニーズと発展の影響を強く受けて形作られるようになる。そして安全性を実証できる食品供給者が消費者から信用され主役となる。これについて中国は発展途上である。2040年には安心を与える食料とそうでないものとの間に相当な価格差が生まれる。
・アジアの伝統的なハイテク食生活
高齢化と飽食に直面する東アジアでは、食生活の健全性が強化される。アジアの健康に関する伝統と近代科学が融合する。医と食の境界はあやふやとなり、そこには十分なマーケットができる。欧米式食生活は見直され、世界的にバランスを重視した食生活がさらに進行する。
・キッチンがなくなるアジア
2040年には日本の食品の70%以上が家庭外で調理されるようになる。その結果、食品は製品からサービスへと移行する。消費者向けの食材市場は縮小する。キッチンは買ってきた食事を再調理または再加熱することがメインになる。
・新たな超ニッチ化時代
食品・食材の差別化と付加価値化がさらに進行し、より細分化された新たなニッチ製品・市場が創造される。ニッチ需要を満たすためのバイオ技術、超高付加価値食品の供給者として日本の役割が期待される。
この分析結果に対して、納得できる部分と『ん!?』と感じる部分は人それぞれでしょう。遺伝子組み換え食品に消極的な日本の今後、食の安全・安心のさらなる強化、古き良き時代の食生活を見直して医食同源へ回帰、しかし料理離れは進行し、食の志向と嗜好はさらに多様化する──。
結果報告の後、茂木友三郎キッコーマン株式会社名誉会長による講演がありました。その中で茂木会長は「高付加価値」という言葉を何度も口にしています。これはケント氏の超ニッチ化時代予測と符合しています。
「世界で、日本食に対する関心が近年一層増しております。その品質・美味しさなどが認められて(海外の)消費者から支持されるものが多く、輸出増加に取り組むことで農林水産業の高付加価値化、高度化につながるという狙いがあるのでございます。少子高齢化が進む日本では、(食料流通が)量的に減少へ向かうことから、(食品関連業界は)高付加価値化と国際化以外に生き残る道はありません。農業においても高付加価値品種への転換が必要になるでしょう」(茂木友三郎名誉会長)

「世界で、日本食に対する関心が近年一層増しております。その品質・美味しさなどが認められて(海外の)消費者から支持されるものが多く、輸出増加に取り組むことで農林水産業の高付加価値化、高度化につながるという狙いがあるのでございます。少子高齢化が進む日本では、(食料流通が)量的に減少へ向かうことから、(食品関連業界は)高付加価値化と国際化以外に生き残る道はありません。農業においても高付加価値品種への転換が必要になるでしょう」(茂木友三郎名誉会長)
ケント氏の言葉にもあったように、未来は一つではありません。ただし、その方向性は、過去からつながる「今」私たちがどういう行動を取るかにかかっています。まずは、変化する食と農業の環境をしっかりと意識したほうが良さそうですね。ジェフリー・ウィギン米国大使館農務担当公使の閉会挨拶がとても印象的でした。
「今日は劇的な変化について語られました。30年後のことですが、もうすでに我々はその変化の速さを感じています。消費者の富が増えているアジアを身に沁みて感じています。FOOD2040は我々に将来に関して考えろ、そして明日は今日と違うのだということを示してくれます。先をきちんと見なければ、置き去りにされてしまうのです」(ジェフリー・ウィギン農務担当公使)

