Home> 特集記事> 季節のイベント 2012.05_02

10億人急増する東アジアの中産階級



スーパーマーケットやコンビニエンスストアには、いつもたくさんの食べ物が並んでいますね。国産食と輸入食が両輪となって、私たちの毎日を支えてくれています。これまで続いてきたことだから、これからも変わらない。無意識にそう考えてしまいがちですが、少し冷静に日本や世界の状況を見てみると、むしろ不安要素のほうが目立ちます。地球という限られたエリアの中で、人口が加速度的に増加していることだけでも事態は深刻です。
昨年1年間、米国農務省がアメリカ穀物協会の協力を得て、東アジアにおける2040年に向けた食品、農業、消費生活の未来像を調査研究する『FOOD2040』を実施したことは前回の特集で紹介しました。そして去る4月18日、経団連会館においてその調査結果が報告されました。

報告に先立ち、米国大使館カート・トン首席公使は挨拶の中で「日本食の素晴らしさは世界中のマーケットで競争できる。しかし競争するためには他の産業と同じく、新しさに適合していく改革力が必要」と提言しました。
「認識のあるなしに関わらず、農業というものは今後ハイテクの事業であり、そのスキルが必要となってきます。今日、農業で生きていくのなら販売やセールスのスキルだけでなく、情報技術も理解しなければならず、生理学や遺伝子学、高度な資金メカニズムなども理解しなければなりません。洗練されたスキルセットが必要とされ、農業をビジネスのように取り扱える人こそが今後数十年の東アジアにおいて素晴らしい機会を手にするでしょう」(カート・トン首席公使)
農業を取り巻く環境は、かつてないほどの大きな変化が求められているようです。そしてこのことは若者の野心をかきたてる可能性があり、それが農業変革に継っていく可能性も公使は示唆しました。満席の参加者たちは食品や農産物に関わる業界関係者ばかりです。会場は立ち上がりから緊張感の漂う雰囲気となりました。

FOOD2040のスポンサーであるアメリカ穀物協会は、アメリカ産の大麦、トウモロコシ、ソルガムおよびその関連製品の国際市場促進を目的とした非営利団体です。そして現在50ヶ国以上で活動する同協会のもっとも古いパートナーは日本だそうです。挨拶の壇上でまずそう語ったアメリカ穀物協会トーマス・ドール理事長兼CEOは、続いて「いまもっとも重要なこと、それは世界中で中産階級が急速に台頭しているということです」と指摘しました。
アメリカ穀物協会トーマス・ドール理事長兼CEO「我々の調査では1990年代から2009年までに10億人ほどの中産階級がいた。そして2020年までにもう10億人が中産階級へ加わってきます。そのほとんどはアジアです。生産者に圧力がかかるでしょう。世界の繁栄の輪が、結果として拡大しています。これは大きな課題であり、大きなチャンスでもあるのです。そこで我々は起こりうる影響・結果を検討しようと決めました。FOOD2040が、その結果として出てきたのです」(トーマス・ドール理事長)
納得です。じつは米国農務省とアメリカ穀物協会がなぜアメリカや世界ではなく東アジアの食と農を未来分析するのか、ちょっと不思議に感じていました。世界のパンかごと呼ばれるほど穀物輸出の多いアメリカにとって、今後数十年の東アジアは最重要視すべきエリアだったのですね。さらにドール理事長は東アジアの中でも日本を研究することが重要であると言います。
「日本の過去30年ほどを見ますと一人あたりの所得が増加し、そして人口が高齢化しています。これから世界の多くの国で同じことが起きるでしょう。だから日本の経験を参考にするのは、信じられないほど多くの価値があるのです。食品生産・製造・流通の劇的な進歩の多くはアジアで起こるはずです。とくに日本で多く起こります。望むらくは民間の先見の銘と政府の適切な政策によって、究極的にはこのプロセスで日本がリーダーとなってほしい。そしてできればアメリカもリーダーになりたいと思います」(トーマス・ドール理事長)

日本がリーダーに!
ドール理事長はブッシュ前アメリカ大統領のもと、米国農務省農村開発農務次官としても活躍した経験を持っています。まさしく食と農のプロが語る大胆なスピーチによって、会場は少しづつ熱気を帯びてきました。そんな流れを真正面から受け止めるように、FOOD2040の調査結果は発表されました。





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IMG:FOOD2040会場イメージ