米国農務省は昨年1年間、アメリカ穀物協会の協力を得てFOOD2040に関する調査研究を実施しました。FOOD2040とは『東アジアにおける2040年に向けた食品、農業、消費生活の未来像』のこと。約30年後、日本を含む東アジアの食と農はどうなっているのでしょう。私たち消費者の生活はどうなっているのでしょう。いま私たちが当たり前に享受している食料環境は、まだそのときも維持されているのでしょうか。この疑問を食に関する各界の著名人に質問したところ、とても興味ある意見をいただけたので次に紹介しましょう。

「たぶん日本の歴史で現在が一番、豊かで安全な食事を楽しんでいる時代だと思います。そのうえで今後は何より『安心』が大事になるでしょう。食品添加物や残留農薬、遺伝子組み換え食品などをおそれる日本の消費者から、事業者や行政が信頼を得ること。そして消費者も科学に対する認識を持って学ぶなら、30年後の日本はもっと豊かで安全な食品を楽しむことができるだろうと思っています」
食品の安全性はこの半世紀で飛躍的に向上しています。今後はその安全性を信頼できる形で伝え、そしてしっかり理解すること。それは確かに重要な課題ですね。

「我々は完全自給よりも、もっともっと美味しいものをたくさん食べるという機会に恵まれていると思います。問題は現在の食生活をどれだけ維持できるかです。そのためにはいま経済界で一般に行われているグローバル化を食料でも実施し、日本の美味しい食を世界へ、また世界の美味しい食を日本へという相互交流こそが今後30年を考えていくときに重要だと思います。地球全体としての食生活の豊かさを享受するには、地球全体の資源の有効活用が必要なんです」
食のグローバル化については、日本の農家に大きな打撃を与えるのではという懸念の声も聞かれます。30年後、日本の『農』はどうなっているのでしょうか。全国米穀販売事業共済協同組合の木村良理事長は、米に携わる立場から「米作りをもっともっと進歩させなくては」と分析しました。
「日本人は味にうるさいです。逆にそれを世界へ広めましょう。米作りを進歩させ、日本のわずかなこの土地をより豊かにしていく。これを今から始めれば、5年後10年後には花が咲きます。そのときにはアジアの国々も世界も進歩して、美味しさへのニーズはとても高まってくるだろうと思います。そうすれば今後10年20年30年のうちに日本は米を輸出する国になっているでしょう。長寿国日本の食べ物は世界から注目されています。その中で米の果たす役割は大きくなるだろうと、大変楽しみしているところです」

いずれの見通しにおいても、30年後の食料事情は基本的に安心できそうですね。もちろん資源のさらなる有効活用やさらなる品質向上、そしてより安心な食生活へという努力は欠かせません。
では今後30年間、私たちを取り巻く食料事情が豊かであるとしたとき、私たちはひたすらにその豊かさを享受していればいいのでしょうか。
次はそんな豊かさ対策について、食の専門家たちの意見を紹介しましょう。
次はそんな豊かさ対策について、食の専門家たちの意見を紹介しましょう。
