Home> 特集記事> 季節のイベント 2012.01_03

多様化する農業政策と、国民への一貫した食糧供給



カボチャ収穫農業指導が中心だった農務省は、1929年に大きく変化します。その年から10年間続く世界大恐慌を経験することで、農業指導以外の政策も充実させる必要に迫られたのです。1933年2月にはアメリカの全銀行が業務を停止するという異常事態になりましたが、農務省は融資を必要とする小規模農家を支援するなど食糧生産を継続させました。
世界大恐慌以降、農務省は政策を多様化させます。安心安全な食糧の安定的な生産と流通を継続するため、関連する多くを政策に取り入れていったのです。

牧場世界各地に派遣された海外農業局(Foreign Agricultural Service)のスタッフによる世界的な農産物事情の調査(http://gain.fas.usda.gov/Pages/Default.aspx)、食品安全検査(例えば、米国すべての食肉処理場には食品安全検査局Food Safety Inspection Serviceの検査官が常駐しています)、天然資源保護、野生動物の実態調査、危機管理......。
カボチャ収穫 1946年に施行された学校給食法も、農業政策の一環です。この法律によりアメリカの子どもたちはみんな安定した栄養補給をすることができるようになりました。アメリカの学校給食には朝食もあるのです。この政策は子どもたちの栄養摂取が徹底できると同時に、余剰農産物の有効利用という側面も持っています。
1964年には農務省所管によるフードスタンプが制度化されました。これは低所得者向けの食費補助対策で、4人家族の月収が2500ドル以下である場合に1人あたり最大100ドル相当のスタンプが支給される制度です。現在フードスタンプの受給者は4000万人以上。食糧の安定供給はしっかり継続されています。

農務省設立当時、アメリカ人の約半数が農業従事者でした。現在その割合は2%にまで減少しています。同時にアメリカは現在、『世界のパンかご』と呼ばれるほど大量の穀物を世界に輸出しています。つまり少ない人員で多くの農産物を収穫する効率的農業が実践されているのです。エルスワースから始まった改革的農業指導は、大きく大きく成功しました。

そしてリンカーン大統領の思想も消えていません。
現在農務省総予算の60%がフードスタンプに割り当てられています。『人民の省』は、150年経った今も健在なのです。


写真提供:USDA




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