もっと知りたい食の安全...「農薬の残留規準ってどうやって決めるの?」などアメリカの食に対するみなさんの素朴な疑問にお答えします。

vol2 残留農薬基準、どうやって決まるの?

残留農薬基準を決めるには、まず「一日摂取許容量(ADIと訳されます)」という、

"その農薬を一生毎日摂取し続けても身体への影響がでないと考えられる量"

を算出します。そのためには、まず動物実験で農薬による悪影響が見られない量を決定します。実験動物は、ラットやマウスが用いられますが、ウサギ、イヌ、サルなどが使われます。

毒性検査は主に

  • 急性毒性
  • 亜急性毒性
  • 慢性毒性
  • 変異原性
  • 発がん性
  • 繁殖
  • 催奇形性

など多岐に渡る範囲で実施。これらすべての毒性検査の結果、実験動物に一生涯摂取させて続けても、なんら毒性変化が認められない量が求められます。これを「無毒性量」とし、個体差や実験動物とヒトの違いなどを考慮した上で、これを100で割ったものをADIとします。

例えば、マウスを使った動物実験で無毒性量が10 mg/kg/dayの場合にADIは0.1 mg/kg/dayとなります。

次に、その農薬が残留する可能性のあるすべての作物の摂取量を計算します。これは、同じ農薬が例えば稲とトマトというように複数の作物に使用が許可されている場合、米とトマトの双方に残留する可能性があるからです。日本では「国民栄養調査」を、米国では「食品別摂取量調査」をもとに、まずそれぞれの作物の摂取量に応じて残留農薬基準を設定します。次にそれらの残留農薬基準が算定できたら、作物の摂取量を掛け合わせ、すべてを合計した量がADIの80%を超えないことを確認します。この条件を満たさない場合には農薬の使用基準を見直したり、残留基準を再評価します。

こうすることで残留農薬基準はADIよりもさらに低い値になるわけです。つまり、「現実では考えられない最悪のケースを想定」することで、「極めて余裕をもった基準値が設定」されているわけです。

残留農薬基準違反に関する報道を頻繁に目にします。なかでもニュースになるものは「残留農薬基準の何倍に相当する農薬が検出された」という内容のものが多く不安を感じられる方も多いもしれません。もちろん、違反は違反として適切に対処する必要があり、事実きちんと法に基づき対処されています。しかし、残留農薬基準の設定の仕方を理解すれば、たとえある1つの食品に「残留基準の数倍」の残留があってもそれはその農薬の一日摂取許容量(ADI)の数パーセントにしかならず、無毒性量のはるか下であるということがわかると思います。ですから健康への影響はないと考えられるわけです。

残留農薬基準を設定するために必要な

「農薬の評価に対する基本的な考え方」

は各国共通で、FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)の合同食品規格委員会(CODEX:コーデックス委員会)の定める国際残留農薬基準を採用することになっています。ただし、食習慣などの違いにより、試算された総摂取量がADIを超えてしまうような場合には、国際基準より厳しい規準をそれぞれの国で定めることができます。日本では厚生労働省と食品安全委員会が、米国では農薬についてはEPA(環境保護庁)が、動物用医薬品等についてはFDA(食品医薬品局)が残留農薬基準の基準設定をおこなっています。