もっと知りたい食の安全...「農薬の残留規準ってどうやって決めるの?」などアメリカの食に対するみなさんの素朴な疑問にお答えします。

vol4 農薬や食品添加物はガンの原因になるの?

農薬や食品添加物に関する不正確なマスコミ報道が度重なることで、消費者の誤った理解へと向かわせています。私たちは、天然のものは安全と感情的に判断しがちですが、自然の植物であっても病気や害虫と戦うために、それ自体が毒性物質を作り出しているものが数多く報告されています。また、細菌やカビなどの微生物のなかにも有害物質や発ガン物質を作り出すものがあることも明らかにされています。これらの微生物が食品中で繁殖すれば、私たちの健康に害を及ぼします。

確かに、農薬や食品添加物も多量にとれば毒性を現すことがあります。しかしそれは、あくまでも事故などで通常では考えられない程の量をとった場合です。実際には、農薬や食品添加物は安全性について厳しい審査を受け、法律によって残留基準や使用規準が定められていますから、十分に安全性が確保されています。(「残留農薬基準、どうやって決まるの?」を参照)逆に、植物の中で作り出される毒性物質は、法律で規制できるものではないという点で、農薬や食品添加物より危険性が高い場合があるともいえます。

一般には農薬や食品添加物が、特にガンを引き起こす主要な原因であると考えている人がかなり多いようです。ここに非常に興味深い調査結果があるのでご覧いただきましょう。

食品安全ハンドブック

このグラフは、ガンの専門家である東京大学名誉教授の黒木登志夫氏(現・岐阜大学学長)が紹介している、主婦とガンの疫学者を対象に行ったガンの原因についてのアンケートです。おそらく全米科学アカデミーのデータを引用したものと思われますが、主婦が農薬や食品添加物をガンの大きな原因であると考えているのに対し、学者たちはまったく異なった見解を持っています。学者がガンの主な原因として挙げているのは、タバコや私たちが普段食べている食物であり、食品中の残留農薬がガンの原因と答えた学者は一人もいませんでした。

農薬や食品添加物の安全性についての情報を正確に伝えず、ともあれば扇動的な記事やテレビ番組を多く見かけますが、ガンの原因について本当に知りたいのであればそれを究明する学問に何年も費やしてきた専門家の科学的知見に裏打ちされた見解に注目すべきでしょう。