食品を介して起こる疾病は、世界の多くの国において国民の健康に被害をもたらすため、それを防止するためにさまざまな取り組みが行われています。もちろん農産物の生産者や食品を製造する産業界では食品安全にかかわる危害やリスクを低減するために日々取り組んでいます。ここではアメリカにおける一般家庭をターゲットにした「食品の衛生的な取り扱い」について、教育活動の一例をご紹介します。
食品を原因とする疾病の多くは、
- サルモネラ
- カンピロバクター
- 大腸菌
- 黄色ブドウ球菌
といった微生物によって引き起こされます。その一例として、1996年に日本でおきた0-157(大腸菌)による食中毒の発生がありました。あの時は大変多くの人が健康被害を受けましたから記憶に残っている人も多いと思います。これらの微生物を介した感染や中毒(食品上で増殖する微生物が毒素を発生することによって起こる)は、消費者が食品を購入した後の
- 保存
- 調理
- 取り扱い
の不備によって引き起こされるケースが多いとされています。有害な微生物、病気の原因となる毒素は目に見えないし、臭いも味もしません。もちろん、腐った臭いがしたら食べてはいけないのは言うまでもありませんが......。
アメリカにおいても国民の健康を守るため、食品の安全な取り扱いに関して対策を行っています。米国農務省は「Fight BAC!」http://www.fightbac.org/と名づけた食品保全のための4つのガイドラインを打ち出し、消費者に 守るよう呼びかけています。これらのガイドラインは、家庭で実際に食品を口に入れるまでの各段階で基本的に守る必要があるとされるものが示されています。ガイドラインは次の通り;
- 清潔にする - 手、調理器具、食器の表面をよく洗う。
- 分ける - 交差汚染を起こさない。
- 加熱する - 適切な温度まで上げて調理する。
- 冷却する - すみやかに冷蔵庫にいれる。
上記四つのガイドラインの中で、特に重要なポイントとされているのが、適切な温度管理です。
食中毒を引き起こす食品には加熱しないもの(生もの)、または部分的にしか加熱されていないものが最も多く上げられます。日本では生卵を一般的に食べますが、アメリカではサルモネラ菌感染の原因になるという理由から、ほとんどの人は食べません。十分な温度で調理すれば(注)、食品感染を起こす微生物病原体はたいてい殺すことができます。また、食品が運ぶ微生物病原体の多くは4℃以下では増えません。
(注)卵、豚肉、牛ひき肉は71℃、鶏肉は82℃、牛肉は63℃以上が望ましい。
因みに4℃から63℃の温度帯は食品が運ぶ微生物病原体が繁殖する「危険ゾーン」といわれています。食品が危険ゾーンに置かれる時間を短くすれば、家庭内での食品によって引き起こされる病気のリスクの減らし、予防することができます。